鹿島敗退も復帰の柴崎存在感 後半投入で流れ一変 Jリーグ・ルヴァン杯準々決勝

 Jリーグ・YBCルヴァン・カップ準々決勝第2戦(10日)。鹿島は延長戦の末、名古屋に敗れたが、その存在感はやはり別格だった。短い準備期間、数カ月実戦から遠ざかったことによる試合勘の欠如。そんな周囲の心配をよそに、MF柴崎岳(青森県野辺地町出身、青森山田高出)がボランチの位置から効果的にパスを散らし、名古屋に傾いた流れを一気に鹿島に引き寄せた。

 攻撃に迫力を欠き、1点ビハインドで前半を終えた鹿島。岩政監督が後半開始と同時に柴崎をピッチに送り込むと、本拠地のサポーターが沸き立った。

 投入からわずか6分で真価を発揮した。味方GKのキックのこぼれ球を拾うと、右足で細かく2度タッチ。前線の動き出しのタイミングをうかがい、3タッチ目でペナルティーエリア付近に走り込んだFW仲間の足元にぴたりとつける縦パスを通した。仲間は勢いそのままにドリブル突破し同点弾を流し込んだ。

 延長戦を含めた75分間のプレーで優れた戦術眼とパスセンスを見せつけた。短いパスでリズムをつくり、攻撃が手詰まりになるとサイドチェンジやダイレクトパスで局面を打開。ミスはほとんど見られなかった。チームは決定機を生かせず敗れたが「勢いをつけるための仕事をできたという意味では良かった」と冷静に振り返った。

 「タイトルを取るために帰ってきた」。8日の加入会見で何度も口にした言葉だ。柴崎在籍時の鹿島は勝負強さが際立ち、競った展開でもしぶとく勝ち切る試合が目立った。だが、柴崎がスペインにいた6年半の間に、選手は大きく入れ替わり、2016年を最後に国内主要タイトルから遠ざかる。今季もこの日のルヴァン杯敗退により、タイトル獲得の可能性を残すのはリーグ戦のみに。残り8試合で首位と勝ち点差9の6位。厳しい戦いは続くが、柴崎は「何とか勝利をもぎ取る。毎試合、そういう気持ちを出そうと思っている」と先を見据えた。

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