青森県、再エネ新税創設へ 「搾取構造」是正狙う 既存設備に課税も検討

記者会見で「共生構想」を発表する宮下知事=12日、県庁

 宮下宗一郎知事は12日、再生可能エネルギーを対象とした新税の創設を検討すると明らかにした。まずは陸上風力発電を対象にした「法定外普通税」の制度設計に着手し、2023年度内に制度化の可否を判断する。青森県内の大規模な再エネ事業は県外資本が占め、つくられた電気は都市部で使われる現状を念頭に「(新税の導入によって)青森県の自然が都会の電力のために搾取されている構造」の是正を図りたいとした。

 12日、宮下知事は自然環境と再エネの「共生構想」を発表。新税について「環境保全や再エネ推進、子育て支援、教育、高齢者対策にも使える財源」と述べた。一方、税率や税収の規模感は「よく検討する」とし、23年度内は県庁内部で検討を進め、その後は有識者会議で導入に向けた議論が必要との認識を示した。

 課税対象は大規模開発を伴う陸上風力発電事業に絞り、既に設置済みの設備への課税は「可能性としてはある」と含みを持たせた。洋上風力は想定していないという。太陽光発電への課税は「環境にどれだけ負荷をかけているか、よく考えないといけない」とし、今後の検討課題とした。

 自治体が独自に条例を定めて課す法定外税には国の同意が必要。再エネ事業者への課税が同意された事例はまだない一方、宮城県と岡山県美作市は条例を制定済みで、国が可否を協議中。宮城県では7月、森林開発する事業者に課税して開発抑制、森林保全を図る条例が成立。宮下知事は「(課税に)規制の意味合いを持たせるかどうかはこれから検討する」と述べた。

 県内は風況が良く、風力発電設備の導入容量は約79万キロワット(22年度末)で全国一。新税導入の理由を「自然環境の破壊が目に付き、失われたものと取り返さないといけないものとのバランスを考えた」と語った。

 共生構想はこのほか、漁港区域での洋上風力発電事業に関するルール整備、国が洋上風力の「促進区域」に指定する見通しの青森県沖日本海南側の海域に近い津軽港(鯵ケ沢町)を保守・管理拠点として利用する方針を掲げた。県内の電力需要相当量の全てを、再エネ発電で賄うことが可能な規模の導入を目指すとした。

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