「この時期の増加異例」 栃木県内でインフルエンザ感染者急増 目立つ子どもの感染

 栃木県内でインフルエンザの感染者数が急増している。県感染症情報センターによると、県内76カ所の定点医療機関から8月28日~9月3日(第35週)に報告された患者数は前週比88人増の128人で、1医療機関当たり1.68人となり、流行入りの目安とされる「1」を超えた。例年冬に流行するため、県感染症対策課は「この時期の患者数の増加は異例」とし、季節外れの感染拡大を懸念する。医療関係者はマスクの着用や手洗いなど、基本的な感染対策を講じるよう呼びかけている。

 同課によると、インフルエンザは例年、12月ごろにはやりだし、1~3月に患者数のピークを迎える。夏の感染拡大は珍しく、過去には2009年8月に1医療機関当たり1人を超えたことがあった。

 今年7月24日~8月20日の4週間の患者数はほぼ20人台で推移。しかし同21~27日(第34週)は19人から40人に増加した。同28日~9月3日(第35週)は128人まで増え、1医療機関当たりは前週の0.53人から1.68人となった。

 患者の年齢別では、10~14歳が20人。次いで5歳が18人、8歳が13人、4歳と6歳が各10人だった。子どもの感染が目立つが、20~70代の大人の患者もいる。

 同課は増加の背景について「分からない」とする一方、小中学校で夏休みが明け、児童生徒の接触機会が増えたことを一因として推測。新型コロナウイルス感染症の患者数も増加傾向で、担当者は「同時流行により、発熱外来や病床の逼迫(ひっぱく)も懸念される。感染状況に気を配り、基本的な感染対策を実施してほしい」と強調した。

 厚生労働省によると、全国では昨年12月から1医療機関当たりの患者数が1人を上回り続けている。8月28日~9月3日は前週比1.16人増の2.56人だった。

 日本感染症学会インフルエンザ委員会委員の自治医大小児科学田村大輔(たむらだいすけ)准教授(49)は「コロナ禍でインフルエンザが流行せず、集団免疫の獲得率が低い。“マスクなし”など公衆衛生環境がコロナ前に戻ったことも一因」とみる。

 家庭や保育園などでの感染の広がりを感じており、「流行が続いたまま秋以降にさらに大きな流行へ向かう可能性はある」と指摘。マスク着用や手指消毒、うがいといった基本的な感染対策の徹底を呼びかけた。

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