【台風13号】事業再開へ復旧急ぐ 茨城・日立 泥かき「先見えぬ」

工場内に流れ込んだ泥のかき出し作業を行う住民=日立市砂沢町

台風13号に伴う大雨で浸水被害に見舞われた茨城県日立市内の事業所では12日、再開に向けて懸命の復旧作業が続いた。浸水被害後の9日からは、市内は最高気温30度前後を連日記録。厳しい残暑の中、河川の越水や内水氾濫が起きた被災地で、泥のかき出しや災害ごみの運び出し作業に追われた。

市北部の同市砂沢町。自動車修理販売業の庄司義勝さん(76)は12日、手伝いに駆け付けた同級生や親族とともに、汗だくになりながら泥のかき出し作業に追われた。

一帯の地形はすり鉢状。8日の大雨では坂道から「滝のように水が流れ込んできた」。自宅前の道路は冠水し、排水路から水があふれて濁流が流れ込んだ。自宅は床上浸水。工場もトラックの荷台の高さまで水に漬かった。「一瞬の出来事だった」

被災後から自宅窓は毎日開けたままにしているが、畳はまだ乾かず、現在は2階で生活を余儀なくされている。食事などは家族や友人が支えてくれているという。

庄司さんの会社「庄司自動車サービス」は45年前にこの地で開業。新規客は減ったものの、昔から付き合いが続く「お得意さま」も多い。「再開時期は未定だけど、気持ちとしてはもう少しやりたいと思う」と前を向いた。

氾濫した宮田川沿いの同市白銀町では「渡勇建設」の渡辺勇さん(72)がタンクトップ姿で一輪車を押し、ごみの運び出し作業に汗を流していた。

8日夕に宮田川が氾濫し、自宅と作業場には激流が押し寄せた。自宅は床下浸水し、作業場の木工機械なども一部水に漬かった。水が引くと、500坪ある敷地の半分ほどが泥で覆われていた。

9日からは家族や従業員と総出で泥のかき出し作業を続け、12日も木材置き場を清掃。「終わりが見えてきたかなと思って物をどかしてみると、また泥がある。その連続」といい、「まだ先が見えないね」とため息をついた。

高齢者が多い地域のため、ボランティアや災害ごみに関する「情報不足が一番困る」と話す渡辺さん。車を運転できない住民も多いため、ごみの運搬も一苦労という。

被災した作業場では住宅関係の本業のほかに、ユネスコ無形文化遺産「日立風流物」の大規模修繕も手がけてきた。戦後の復元に関わった先代から引き継いだ「大切な仕事」。復興を遂げ、次の機会に備えるつもりだ。

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