再エネ立地禁止区域、青森県が条例制定へ 2024年度中 合意形成プロセスも制度化

 宮下宗一郎知事は12日、陸上風力や太陽光など再生可能エネルギーの開発について、施設の立地禁止区域を定めるゾーニングなどの条例を来年度中に制定する方針を示した。再エネ事業の計画や実施そのものに自治体の意見が反映できないのは「制度上の欠陥」として、条例によって地域と事業者の合意形成に関するプロセスも制度化を図る。

 陸上風力を巡っては、八甲田周辺で計画中の「(仮称)みちのく風力発電事業」に対し、青森市など地元自治体が反発し、事業者に白紙撤回を要請。しかし現状では、事業区域を選定する前に考慮すべき点や、地元との合意形成に関するルールがないため、地域と事業者のあつれきを生む恐れがある。

 宮下知事は会見で、「水循環や生態系への影響がある区域のほか、景観や信仰など地域が大切にしてきた場所についても守るべき価値を考え、区域を特定していく」と説明した。

 再エネなどの大規模開発は通常、県の環境影響評価(アセスメント)に基づき、事業者が周辺環境等への影響を評価する。今回、制度構築を図る条例等では、アセスの手続き前に、事業者側へ再エネと自然環境の共生に向けた県の姿勢を明示し、自治体との合意形成についても、より円滑に進めるための手法を示す。条例については本年度中に検討を始め、来年度中の施行を目指す。

 宮下知事は現行のアセスについて「(事業者が)事業を推進するための自主規制に過ぎない」と指摘。その上で、「事業をやるかやらないかについても、意見を言える環境が自治体にも住民にもない。それらは大規模な自然開発が伴う風力発電に対して、制度上の欠陥ではないか」と述べ、条例の必要性を強調した。

 県のゾーニングについて青森市の西秀記市長は同日の取材に「再エネ全体の話であり、みちのく風力発電事業や、地熱発電の検討を含んでいると理解する。これまでは環境に影響が及ぶ場所でも、事業者が自由に計画を策定できた。ゾーニングは場所を見極めて事業を進めるものであり、必要だと考える」と話した。

 宮下知事は「八甲田の事業がわれわれに投げかけたことは非常に大きい。電力が大事なのは間違いないが、過去から守られてきた自然があるのも確か。今回の構想を通じ、青森の自然を残しながら再エネを推進していきたい」と意欲を述べた。

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