京アニ「ツルネ」に盗用確信「ここまでやられたら最悪のこと考えないと」青葉被告、殺意に転化か

青葉真司被告

 36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第5回公判が13日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれた。前回審理に引き続いて被告人質問があり、青葉被告は事件8カ月前、「京都アニメーション大賞」に応募した小説のアイデアが京アニの人気シリーズ「ツルネ」で盗用されたと考え、「自分を落選させた後もこういうことをするのか。ここまでやられたら最悪のことを考えないといけない」などと当時の心境を述べた。

 小説のアイデアを盗用されたとの「被害意識」が京アニへの怒りとなり、苛烈な殺意へと転化した可能性がある。

 この日、青葉被告は18年11月にテレビ放映された京アニ作品「ツルネ」を偶然視聴したと説明した。放映されていたのは高校の弓道部員らがスーパーで2割引きの精肉を購入する場面で、青葉被告はこのシーンを見て自分の小説のアイデアが盗用されていると感じたという。

 青葉被告が16年11月に京アニ大賞に応募した長編小説「リアリスティックウエポン」には、ヒロイン役のアンドロイドが半額に割引きされた総菜を買いあさる描写があった。

 被告人質問で、青葉被告はツルネを視聴した直後、2ちゃんねるに「ツルネでもぱくってやがる。ありえねえ。つくづくありえない」「ガソリンをまいて燃やすわけでもないんだから」「爆発物を持って京アニに突っ込んだり、無差別テロをしようとするわけではないんだから」などと京アニ事件を想起させるような書き込みをしていたことを明かした。

 弁護人から書き込みの趣旨や当時の心境を問われると「最後の段階まで行く直前の段階。人間関係は切っちゃえば終わるが、京アニは離れようと思っても離れられない。ここまでやられて切れないとなると、最悪のことを考えないといけない」などと語った。

 青葉被告は、ツルネ以外の京アニ作品「Free!」「映画けいおん!」でも「盗用があった」と主張しているが、京アニは事件後一貫して盗用を否定している。

 弁護側は公判で、犯行は「青葉被告の人生をもてあそんだ『闇の人物』への反撃だった」と主張。事件当時の青葉被告は妄想性障害の影響で心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を求めている。検察側は、妄想に支配された末の犯行ではなく、「筋違いの恨みによる復讐」と指摘。被告には事件当時、完全責任能力があったとしている。

  起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで火を付けて建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせた、などとしている。

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