袴田巌さん再審めぐる三者協議 裁判所は年度内の結審の意向示す 12日(静岡県)

袴田巌さんの再審=裁判のやり直しをめぐり、12日行われた三者協議で裁判所は、初公判の候補日を提示し、年度内に結審したい意向を示しました。

見えてきた再審の日程に、姉のひで子さんや支援者らは早期無罪判決へ期待を高めています。

(袴田ひで子さん)

「完全に巌は無罪ですから、いい結果が出ることを期待している」「今から嬉しくてしょうがない、そういう心境でございます」

喜びの表情を見せる袴田巌さんの姉、ひで子さん。12日、袴田さんの再審の行方を協議する5回目の三者協議で、大きな進展がありました。

1966年、旧清水市でみそ製造会社の一家4人を殺害したとして、死刑が確定した袴田巌さん。

2023年3月、犯行着衣とされている5点の衣類について、東京高裁が「犯行着衣ではない」とする弁護側の主張を認め再審が確定し、現在、再審公判のスケジュールなどを話し合う協議が、裁判所と弁護団と検察の三者で進められています。これまでの協議で、弁護団は、5点の衣類は捜査機関によってねつ造されたものだとして、証拠からの排除を訴え袴田さんの早期無罪判決を求めています。一方、検察側は袴田さんの有罪を主張し、5点の衣類について、法医学者ら7人が再鑑定した結果を、新証拠として請求する方針を示しています。2023年4月から三者協議が続く中、5回目となった12日の協議で大きな動きがありました。

(弁護団 間 光洋 弁護士)

「最短で10月下旬に第一回公判が開かれる可能性が出てきた」

弁護団によりますと、裁判所は10月27日を再審の初公判の候補日として示しました。さらに、裁判所は、2024年3月27日までに、あわせて12回の裁判の候補日を提示していて、年度末までに結審したい意向を示しているということです。しかし、弁護団からは…

(弁護団 間 光洋 弁護士)

「検察官の有罪立証を許すという前提については、弁護団としては受け入れられない、納得できない」「結審までの道筋がある程度ついたという点は評価できると思っている」

一方、袴田巌さんを長年支える姉、ひで子さん。早期の無罪判決に向け期待が高まりました。

(袴田 ひで子さん)

「57年間戦ってきた結審が付く」「57年であろうが58年であろうが、もう終わると思うと本当にうれしい、もうなんか今から嬉しくてしょうがない、そういう心境」

現在は、姉ひで子さんと浜松市内に住む巌さん。巌さんに初公判の候補日が示されたことは伝えていません。

(袴田 ひで子さん)

「巌は再審は終わったと言っている。拘置所にいたときから、だから再審の話は一切しない、裁判に決着がついたら話す」

巌さんはきょうも日課のドライブに出かけます。

裁判所は、袴田巌さんの裁判への出廷について、これまでの協議で「強制的に出廷させることは考えていない」として、公判の直前に決めるとしています。再審では、専門家らの証人尋問も行われる見通しで、9月27日の三者協議で初公判の日程などが決定する見通しです。

12日、具体的な裁判日程が裁判所から示され、前進を見せた袴田さんの再審。今後開かれる裁判のポイントを、元検察官の若狭勝弁護士に聞きました。裁判所は、12日の三者協議で年度内にも審理を終結をさせたいとして、2024年3月までの、合わせて12回の裁判日程を提示しました。元検察官の若狭弁護士は「裁判所の、早期に結審し早期に判決に至りたい」という思いが見て取れると話します。

(元検察官 若狭 勝 弁護士)

「これまでのいきさつ、袴田さんの年齢からして早期結審・判決が大きな軸足と裁判所が考えている」

今後、早ければ10月27日にも開かれる初公判。裁判ではどのようなことが争われていくのでしょうか。若狭弁護士は、実質的な争点は、事件から約1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかった「5点の衣類」が犯行着衣かどうか、にあると話します。

(元検察官 若狭 勝 弁護士)

「検察としては無罪になるのは想定の範囲内だと思う、証拠のねつ造を積極的に認定されることは避けたいという思いがあると思う」「検察も新たに『5点の衣類』について、専門家の鑑定などを証拠として提出するが、『5点の衣類』が全く関係ない、証拠のねつ造だったのかという点が実質的な争点」

三者協議では、裁判所から年度内の結審を目指す方針が示されましたが、若狭弁護士は、判決が出るのは結審から3か月ほどかかるのではないかと話しています。

(元検察官 若狭 勝 弁護士)

「判決は後世に残るもので、丁寧な認定・記述がなされた判決書を書く必要がある。結審してから3か月程度は必要になるのではないかと思う」

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