現地13日、ブレーブスは早くも地区6連覇を達成した。その立役者の1人が一塁手のマット・オルソンだろう。オルソンはキャリアハイのシーズンを送り、目下、本塁打と打点の二冠を保持し、MVP候補にも名を連ねている。
しかし、オルソンは今年、MVPや自身初の本塁打王などよりも大きな栄誉に輝く可能性がある。それが時に「最も栄誉ある賞」と言われることもある、慈善活動を熱心に行った人格者に贈られる“ロベルト・クレメンテ賞”だ。オルソンはそのブレーブスからの候補にノミネートされた。
オルソンが今回ノミネートされたのは、彼の自閉症患者への支援が評価されたため。オルソンはなぜ自閉症患者に対して熱心に支援を行うようになったのか。そのきっかけは彼の高校時代からの友人であり、自閉症を患っているリース・ブランケンシップさんとの友情にあった。リースさんとオルソンとの間の友情について『MLB.com』が特集している。
リースさんとオルソンの友情が始まったのは高校時代のこと。当時、自閉症のサービスで利用できるものはほとんどなく、リースさんの家族は地元のティーンエイジャーによるボランティアワークを頼るほかなかった。そこでリースさんのセラピーの仕事をすることになったのがオルソンの兄で、オルソンは兄から引き継いでその仕事に従事することになった。
リースさんは言葉を話すことができず、自分の動きをコントロールできない。これが慣れていない10代の高校生にどのように受け止められるかは想像できることだが、オルソンはリースさんの隣で自然にくつろぎ、接していた。リースさんの家族もすぐに2人の間に言葉にならない絆が流れているのを感じたという。
そして、2014年、リースさんはこれまで自分の感情を伝えることができなかったが、コミュニケーション能力が飛躍的に向上し、筆談を習得。さらに彼の知能は幼児並みと考えられていたが、それ以上の知能があるということを周りに証明したのである。
コミュニケーション能力を得たリースさんは、両親と共に自閉症患者への支援施設の構想を練り出した。その事業の支援をGoFundMeというクラウドファンディングフォームで募っていたが、最初の支援は当時アスレチックスのルーキーだったオルソンからの5000ドルだった。
そして、2022年にオルソンはリースさんがいる地元アトランタ・ブレーブスにトレードで移籍。そこで多額の延長契約を手にしてから、さらにリースさんとの自閉症患者の支援に注力していくようになった。
その支援の一環が、自閉症の家族を無料で招待できる、バリアフリーのシート(通称“マット・パック”)の設置だった。聴覚や視覚の刺激が多い球場では、自閉症患者が試合を観戦するのは難しいことだ。リースさんとオルソンは自閉症患者でも試合を観戦できるように配慮した座席の位置を自ら選んだという。
リースさんは最近になって、1試合全てを観戦するというマイルストーンを達成したばかり。オルソンにとって初めての世界一をリースさんが球場で見届ける。その夢の実現まではあともう少しに迫っている。