「スタジオ一帯つぶすしかない」とガソリン着火 青葉被告、凶行直前ためらう様子も

青葉真司被告

 36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第6回公判が9月14日、京都地裁で開かれた。前回審理に引き続いて被告人質問があり、青葉被告が、第1スタジオにいた京アニ社員にガソリンを浴びせ火をつけた当時の心境を振り返り「どうしても許せなかったのが京アニだった。小説をパクったりするのをやめさせるには、スタジオ一帯をつぶすという考えをしないといけない」と述べた。弁護側の質問に答えた。

 この日の被告人質問によると、青葉被告は第1スタジオ前に到着後、一度はガソリン入りの携行缶を地面に置き、実際に放火するかどうか逡巡したという。弁護人からその理由を問われると「秋葉原無差別殺傷事件の加藤元死刑囚もそうだったんだが、やることがあまり好ましくないので、物事を実行するか否か考えた記憶がある。それでも許せなかったのが京アニだった」と述べた。

 検察側は5日の冒頭陳述で、青葉被告は事件3日前の2019年7月15日に京都へ入り、事件現場となる第1スタジオを下見した上で、事件前日までにホームセンターでガソリン携行缶を購入したと説明。犯行動機について「小説のアイデアを盗作されたと一方的に思い込んで京アニを恨み、社員も連帯責任だと考えた」と指摘していた。

 公判で弁護側は、青葉被告が事件を起こしたのは「被告の人生をもてあそんだ『闇の人物』への反撃だった」と主張。事件当時の青葉被告は妄想性障害の影響で心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を求めている。検察側は、妄想に支配された末の犯行ではなく、「筋違いの恨みによる復讐」と指摘。被告には当時、完全責任能力があったとしている。

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで火を付けて建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせた、などとしている。

© 株式会社京都新聞社