社説:モロッコ地震 国際協調で長く支援を

 北アフリカのモロッコ中部で、マグニチュード(M)6.8の地震が発生し、死者、負傷者が約5千人超に上っている。

 震源地は山岳部で、被害の全容はいまだ分かっていない。生存率が大幅に低下する発生から72時間以上が経過しており、犠牲者はさらに増える可能性がある。

 行方不明者の捜索や救助とともに、被災者の支援に総力を挙げたい。

 地震は、現地時間8日午後11時すぎに起き、広範囲にわたり建物が倒壊した。震源から約70キロ北東の観光地マラケシュでも死者が出て、世界遺産に登録されている旧市街でモスク(イスラム教礼拝所)の棟が崩れた。

 特に震源に近い山岳部は、細い道路が土砂崩れや落石などでふさがれ、がれき撤去に必要な重機や、支援物資を運ぶ大型トラックの到着が難しいという。素手で救助作業に当たらざるを得ない村もある。

 深夜の発生で着の身着のまま逃げ出した人も少なくない。余震を恐れ、路上や車の中で過ごす人もおり、食料やテントなどの支援物資が足りない状況だ。

 国連人道問題調整室(OCHA)はマラケシュや周辺で30万人以上が影響を受けたとみている。スペインやカタール、英国、アラブ首長国連邦(UAE)の4カ国が救助隊を派遣している。現地状況を見極めながら、国連をはじめ各国からの救援が必要だろう。

 今回、被害を大きくした要因として、現地の建物の問題が指摘されている。日干しれんがや石積みで、揺れに弱い構造が以前から課題とされていた。

 モロッコは、アフリカとユーラシア両大陸のプレート前線近くに位置し、都市部では過去に大災害が起きたことがあった。だが、山間部にある今回の震源付近では100年以上、大きな地震の記録がなかったため、備える意識が薄かったとも指摘される。

 一昨年はハイチ、今年2月はトルコの地震で、甚大な被害が続いている。何度も震災から立ち上がってきた日本は、さまざまな知見とノウハウを持つ。復旧復興や防災対策に大きく貢献できるはずだ。

 同じ北アフリカでは、リビアで暴風雨により洪水が発生した。国際医療機関によると、行方不明数は1万人を超え、死者は数千人に上る可能性があるとしている。

 世界各地で頻発する自然災害に、国際社会は協調し、息長く支援していく必要がある。

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