WRC“9冠”セバスチャン・ローブ、引き続きのサルディニアでもABTクプラから代役参戦へ/エクストリームE

 ワンメイク電動オフロード選手権『エクストリームE』の2023年終盤戦に向け、ふたたび第7〜8戦の舞台になることが決まったイタリアはサルディニア島でのレースウイークを前に、言わずと知れたWRC世界ラリー選手権“9冠”のレジェンド、セバスチャン・ローブの継続参戦が決定。ナッサー・アル-アティヤの代役として、引き続きABTクプラXEでクララ・アンダーソンと共闘し『クプラ・タバスカンXE』をドライブする。

 今季より完全ダブルヘッダーの年間スケジュールが組まれるエクストリームEは、本来ならこの第7〜8戦で北米大陸のアメリカ合衆国か、南米ブラジルのアマゾン地域を想定したスケジュールを組んでいた。しかしイベント計画が終盤になって頓挫したことを受け、急遽開催地を変更。前戦の開催地でもあったイタリアへ回帰することが発表された。

 そのサルディニア島での前戦にも出場したローブは、昨季までの2年間、スペイン出身のクリスティーナ・グティエレスとともにF1“7冠”王者ルイス・ハミルトン率いるX44ヴィダ・カーボン・レーシングで戦い、昨季2022年は新たな『世界選手権王者』の称号を獲得している。

 その肩書きも引っ提げ、今季は電動化2年目を迎えたWorldRX世界ラリークロス選手権に復帰し、新たにゲラン・シシェリ代表率いるスペシャル・ワン・レーシングとのジョイントで『ランチア・デルタEvo-e RX』のステアリングを握っていた。

 しかし往年の名車をトリビュートしたフル電動モデルは、この7月に開催されたイギリス・リデンヒルの搬入日にまさかの火災事故に見舞われ、全焼による消失という悲劇的な事態となってしまった。

 そんな窮地も乗り越え、ふたたびテウラーダ岬に位置する“ピサーノ・バラック(イタリア陸軍兵舎)”に戻ったローブは、レースウイークを前に「クララと僕には未完の仕事がある」と抱負を語った。

「こうしてABTやクプラとともに、サルディニアに戻ってさらに2戦を争えるのは素晴らしいことだ」と意気込みを語ったローブ。

「前回のことはとても良い思い出だし、クララやチームの皆と再会できることをとても楽しみにしている。期待していた内容に対しては、おそらく当然の結果を得ることができなかったから、今回はより良い結果を出せるように最善を尽くしたい」

前回のサルディニアでセバスチャン・ローブがドライブした『クプラ・タバスカンXE』は週末最速の1台でもあった

■ローブと再タッグのアンダーソン「私たちはカムバックに向け飢えている」

 予選ヒートの成績や各セクターのベストを繋ぎ合わせれば、ローブとアンダーソンは前回のドライバーペアのなかで“最速のふたり”と呼べる組み合わせだったが、そのペースを表彰台フィニッシュにつなげることは叶わず。第5戦ではチームの今季最高成績に並ぶ4位を得たが、第6戦では6位に留まった。

「前回は本当に力強いパフォーマンスを見せられたけど、パンクやグリッドポジションの不運が私たちとポディウムの間に立ちはだかった」と語るのは、ローブとの再タッグが決まったアンダーソン。

 そのWRC王者と同じく今季のWorldRXでも、引き続き同郷スウェーデンのPWRレーシングを母体としたCEディーラーチーム・バイ・ボルボ・コンストラクション・イクイップメントからエントリーし、オリジナルモデルの『PWR RX1e』をドライブする彼女も「私たちはカムバックに向け飢えているし、成功するために全力を尽くすつもり」と、伝説の“ナイン・タイムス・チャンピオン”に同調する。

「私はサルディニアのトラックが大好き。なぜなら楽しいだけでなく、誰にっても容赦ないものでもあるから。7月のイベントでは、このサーフェスがセブにも私にも非常によく合っていることが分かった。それこそがチャンスよね」

 このペアリングを再現させたABTのCEO兼チーム代表のトーマス・ビアマイヤーも「セブがふたたび我々のチームの一員になったことを、とてもうれしく思っている」と付け加えた。

「我々は皆、彼と一緒に仕事をするのをとても楽しんでいるが、同時に少し『未完の仕事』のような気分でもあるね。なぜならクララとセブは力強いパフォーマンスで7月の優勝候補に入っていたことは明らかだからだ。今、彼らはサルディニアでの新たな大会で2度目のチャンスを得ており、それを最大限に活用する決意をしているところだ」

「このサーフェスがセブにも私にも非常によく合っていることが分かった。それこそがチャンスよね」とクララ・アンダーソン(左)

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