【中国】EUの中国製EV調査、輸出に深刻な打撃も[車両]

欧州連合(EU)が中国製の電気自動車(EV)への調査を開始し、中国製EVに相殺関税が課される可能性が指摘されている。中国メーカーは中国に次ぐ世界2位のEV市場である欧州で存在感を強めており、関税が課されれば自動車輸出に深刻な打撃となる恐れもある。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は13日、補助金によって域内の公平な競争が阻害されているとして、中国のEVについて調査する方針を示した。

欧州車に比べて安価な中国車は優位性がある。中国国営中央テレビ(CCTV)系の央視財経によると、中国製電動車の販売価格は平均3万2,000ユーロ(約506万円)で、欧州ブランドの平均5万6,000ユーロを大きく下回る。中国企業は欧州市場で攻勢を強めており、販売店の設置や充電インフラの整備に乗り出す動きが目立つ。

欧州は中国にとって自動車輸出の4割を占める最大の海外市場だ。中国の自動車業界団体、全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)によると、今年1~7月の欧州向けの輸出台数は35万7,000台で、前年通年の実績(31万5,000台)を超えた。このうち4割をEVが占める。

一方で、業界からはこれまでにも、EUが中国のEV輸出に圧力をかけるのではないかと懸念する声が出ていた。毎日経済新聞(電子版)によると、中国自動車工業協会の陳士華副秘書長は先ごろ、「自動車の輸出を重要視しなければならないが、やみくもに楽観視すべきではない。最も懸念しているのは中国車の輸出に対して海外が反ダンピング(不当廉売)関税を課すことだ」と述べ、EUが中国車に対して一定の措置をとる可能性を指摘していた。

中国国務院(中央政府)発展研究中心の副主任を務めた経験を持つ劉世錦氏は、「中国の製造業が内需のみに依存すると大規模な過剰生産につながる恐れがある」と指摘。「中国の輸出、とりわけ自動車産業の輸出を安定させなければならない」との考えを示していた。

■各界から反発の声

EUの調査を巡っては、中国の各界から反発の声が上がっている。

中国商務省は14日、EUの措置は「公平な競争の名の下に自身の産業を保護するための露骨な保護主義的行為で、中国とEUの経済貿易関係に悪影響を及ぼす」として、強い不満を表明するとの談話を発表した。

EU域内の中国企業でつくるEU中国商会は13日、「中国EVの優位性はいわゆる巨額の補助金に頼って形成されるものではない」として、調査に反対する声明を出した。

EUなど欧州での販売台数が多い中国メーカーは、上海汽車集団や浙江吉利集団など。

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