女性のバス運転手なぜ少ない? 女性自衛官・消防士より比率低く、現役女性運転手の本音は

京都市バスの女性運転手。ホームページでも仕事内容を紹介している(京都市交通局提供)

 バスに乗った時、運転手が女性だと「珍しい」と感じる人は少なくないのでは。実際、国内のバス運転手に占める女性比率は極めて低い。京都市交通局は近年、女性運転手を増やそうと、女性対象の説明会を開いたり、職場環境の改善に努めたりしている。

 京都市バスに女性運転手が誕生したのは1991年のこと。以来じわじわと増加傾向だが、今年4月時点で全運転手854人のうち、女性は22人と比率は2.5%にとどまる。全国的にはわずか1.7%(2021年度)だ。

 女性警察官(10.9%、22年)や女性自衛官(8.3%、同)との差は大きく、女性消防士(3.4%、同)の割合より低い。

 市交通局によると、バスの運転には大型2種免許が必要だが、その保有者数にそもそも男女間で大きな偏りがある。「男性職場のイメージが強く、余計に女性が応募しにくいのかもしれない」と担当者。

 大型2種免許の保有者数が減って高齢化も進む中、「今は必要数を採用できているが、将来は厳しくなる恐れがある」と危機感を抱く。安定的な人員確保のためにも、女性へのPRに力を入れる。

■女性向け説明会、営業所の整備も

 2019年度に始めた女性向け説明会はその一環だ。現役の女性運転手が仕事内容を話し、出産や育児などの質問に応じる。職場環境の改善も進め、20年度には烏丸営業所に女性用休憩室やシャワー室を新設。市直営4営業所の整備が完了した。

 現在の車両はパワーステアリング付きのオートマチック車が大半で、車椅子の乗客の介助以外は力が必要な場面はほとんどない。乗客から、女性運転手の車内アナウンスは聞き心地が良く、運転が丁寧との声も寄せられているという。

 ただ、肝心の女性志願者がゼロの年もあり、担当者は「説明会に来てもらえれば精いっぱいアピールしたいが…」と頭を悩ませる。

 女性を増やすためにどうすればいいのか。現役の女性運転手(47)は「気分の浮き沈みなどを話せる場があると助かる」と明かす。勤務時間帯が不規則な上、家事などで忙しい朝夕はバスのラッシュ時と重なり最も運転手が必要になる。

 別の女性運転手(49)は「妊娠中や育児の時は休暇だけでなく、仕事と家庭を両立できるようなシフトを選択できれば」と希望する。

 「体調管理は大変だが、お客様に必要とされていると思うとやりがいを感じる」「毎回新しい気持ちと緊張感を持って乗務している。『ありがとう』の一言がうれしい」などと仕事への充実感もにじませた。

 同局は、女性に限らず大型2種免許を持っていない人を対象にした採用も定期的に実施し、免許の取得費を負担している。「性別や年齢が偏ることで気付かないことはある。女性や若手など多様な人がいることは組織として重要だ」と強調。「応募者の裾野を広げ、さまざまな立場の声をサービスにも生かしていきたい」としている。

■女性運転手に聞く。きっかけ、苦労は?

 京都市交通局の女性運転手2人(Aさん:47歳、Bさん:49歳)との一問一答は次の通り。

―バスの運転手になった年齢、きっかけは

A 43歳の時。バスを利用の際に車内の求人を見てやってみようと思いました。

B 46歳の時。子どもの成長に伴い、パートではなく正社員として働きたいと休職中にバス車内の掲示を見つけました。サービス業、大好きな京都、誰かの役に立つ…と自分の求める条件に合うように思いすぐに応募しました。

―やりがい、苦労は

A 早朝や夜間の勤務で体調管理は大変ですが、通勤や通学で利用するお客様に必要とされていると思うと、とてもやりがいはあります。

B 始業から最終まで日々違う出退時間や路線のシフトに、仕事と家庭の両方のリズムをつかむまで大変でした。毎日毎便、同じことはなく、毎回新しい気持ちと緊張感を持って乗務しています。お客様からの「ありがとう」の一言はうれしく、やりがいを感じます。

―女性運転手が少ない現状をどう考えるか。男性職場だと感じることは

A 性別を意識される女性は敬遠する職業かもしれません。今はまだ少ないかもしれませんが、徐々に増えると思います。男性職場だと私自身は意識していません。

B 女性が少ないので勤務によっては顔を合わせることのない日もあり、少し寂しく感じることもありますが、男女で関係なく、話したり聞いたりできる環境なので特別気にはなりません。

■励ましの言葉、二度見されることも

―仕事の上で女性だから難しいこと。不利、有利な点は

A 車椅子のお客様の乗降は大変な時もあります。良くも悪くも「女性らしい」運転や接客については不利や有利はあると思います。

B 女性だから難しい、不利と感じる部分はありませんが、体力づくりや体調管理には気を付けています。男女差は当然ありますから。女性だから優しい、丁寧な運転対応のイメージで見られることも多いので、それを崩さぬように心がけています。

―女性運転手ということで客に驚かれたり声を掛けられたりすることは

A よくあります。降りる際にびっくりされたり「頑張ってください」と励ましの言葉をいただいたり。「女性の方の運転で安心しました」とお礼を言っていただくと、この仕事に就いて良かったと思います。

B 男性には降車時に二度見されます。女性には「女性ドライバーは初めてやわ」「すごいなあ。頑張ってくださいね」など声を掛けられることも多く励みになっています。

―女性運転手が増えるためにソフト面、ハード面で改善、充実すべき点は

A 女性特有の気分の浮き沈みなどを話せる場があると助かります。

B ハード面は男性と同様なので、特に女性のために必要と思うものはないです。ソフト面では、妊娠や出産、育児といった生活の変化の時に、休暇だけでなく、他業種のように仕事も家庭も両立できるようなシフト(午前8時~午後5時)や、子どもの生活リズムをつくれるようなシフトなどを選択できたらと思います。

■メリハリのある日々を意識

―家庭やプライベートとの両立で意識していること、工夫していること

A 仕事に支障がでないように睡眠を取ることと、家事のタイミングを予定立てて行動するようにしています。

B 仕事の日はとにかく時間を大切に、計画的に家事をしています。自分でなくてもできることは協力のお願いもするようになりました。その分、休日はのんびりと過ごす、メリハリのある日々を心がけています。

―今後、運転手を目指す女性へのアドバイス

A 女性だからこそできる運転や接遇があり、やりがいのある仕事です。ぜひ一緒に働きましょう。

B 運転手になりたい方はチャンスがあれば今すぐ働きましょう。運転手なんて考えたこともなかった方は、入り口は違うかもしれませんが、市バス運転手は運転だけの仕事ではありません。一歩踏み出してチェックしてみてください。 

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