社説:ロ朝首脳会談 孤立深める愚行やめよ

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。

 具体的な協議内容は不明だが、軍事協力の強化で一致したもようだ。ウクライナ侵攻で苦境にあるロシアが、北朝鮮から武器提供を受けるとも指摘される。

 金氏は会談で侵攻への支持を表明した。

 見返りに核・ミサイル開発の関連技術獲得を求め、双方の思惑が合致したとみられる。

 国際社会における北朝鮮の最大の後ろ盾は中国だが、核開発までは擁護しないとの見方がある。より力強い後押しをロシアに期待し、対米共同戦線を敷く狙いがあるのだろう。

 世界から厳しい目で見られる2国が手を結んでも、さらに孤立を深めるだけだ。非道な侵攻を長引かせ、地域の安定を壊す愚行を続けることがあってはならない。

 そもそも北朝鮮との武器取引や軍事技術の支援は、国連安全保障理事会の決議に違反する。賛成した常任理事国のロシアが破ることは許されない。

 なりふり構わない北朝鮮への接近は、多数の死傷者を出し、侵攻に行き詰まるロシアの現状を映している。

 ロシア軍の弾薬不足を補う狙いが大きいと指摘されている。ソ連時代、北朝鮮に軍事技術支援を行っており、北朝鮮はロシアと同じ口径の大砲などに使う弾薬を大量に保有しているためだ。

 ウクライナや米欧が危機感を強めるのは当然だろう。ただ、多くの軍事専門家は戦況を転換するほどの効果はないとみている。

 両首脳の会談は4年半ぶりで、前回と異なるロシア側の厚遇ぶりが目立った。会談場所は、衛星打ち上げ拠点である極東のボストーチヌイ宇宙基地が選ばれた。

 北朝鮮は2021年策定の国防5カ年計画で軍事偵察衛星や原子力潜水艦の保有を掲げており、その意を酌んだのは明らかである。

 だが、核超大国が北朝鮮の核武装に手を貸せば、核拡散防止条約(NPT)体制は一層形骸化する。極東の不安定化はロシアにとっても好ましくないはずで、自制しなくてはならない。

 北朝鮮は13日に日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射した。最高指導者が不在でも軍事態勢を整えているとアピールする狙いもあったのだろう。

 ロシアともども、軍事優先の強硬路線で突き進んでも展望はないと認識するべきだ。

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