地震被災の母国に山形からエール モロッコ料理店のアミン・ヌハエリさん

現地の状況を語るモロッコ出身のアミン・ヌハエリさん=山形市「カフェ・ド・マロック」

 北アフリカ・モロッコ中部の大地震は16日(日本時間)で発生から1週間となった。同国最大の都市カサブランカ出身で、山形市内でモロッコ料理店を営むアミン・ヌハエリさん(33)=同市=は、現地に住む友人の家族が命を落とした。店を一時閉めるほど、ショックは大きかったが「自分にできること、すべきことは、ここからモロッコにエールを送ること」と、母国への思いを語った。

 ヌハエリさんは静岡県にある兄のモロッコ料理店を手伝うため、2013年に来日した。日本人の妻の転勤に伴い、21年に山形市に移住した。カサブランカに住む父と姉ら、家族は無事だったが、震源地に近いマラケシュの友人は、一緒に住む両親が亡くなったという。「ショックだった」とヌハエリさんは言葉を詰まらせる。

 連日、被災地の悲惨な状況が伝えられている。住み慣れた家が倒壊し、余震を恐れ、遠く離れた町へ避難する人々。モロッコは日本に比べ地震が少なく、建物の耐震性も十分ではないという。現地の人たちにとってはこれまで経験したことがない災害。「きっと不安な日々を過ごしていると思う」と思いを寄せ、胸を痛めている。

 ヌハエリさんはショックから体調を崩し、2、3日、店は開けられなかった。多くの常連客や友人らから「モロッコは大丈夫ですか」「家族は無事ですか」と声を掛けてもらったことで、12日から営業を再開。「心配してもらいうれしかった」と語る。

 モロッコ料理店は全国的にも少なく、県によると22年12月現在、本県在住のモロッコ出身者はヌハエリさん1人だけだ。「落ち込んでいても仕方がない。店で一生懸命料理を作り、モロッコについて知ってもらうことが、いまの自分にできること」とヌハエリさん。店を通じて、遠く離れた被災地を知ってもらい、支援の輪を少しでも広げる-。それが、古里のため自分ができることだと言い聞かせ、きょうも厨房に立っている。

地図でモロッコを紹介するアミン・ヌハエリさん=山形市「カフェ・ド・マロック」

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