大病を乗り越え、戸次本町にカフェ&レストラン 原田口さん「地域に愛される店に」【大分県】

新天地で店を再開した原田口貴之さん(左)と妻の萌子さん=大分市中戸次
築100年以上の古民家を改装した店舗
ランチセットは3種類から選べるパスタ、前菜盛り合わせサラダなどを楽しめる

 【大分】大分市の戸次本町地区に「hitoyoshi(ヒトヨシ) カフェとレストランのあいだ」が移転オープンした。店主の原田口貴之さん(37)が悪性脂肪肉腫の手術と療養を経て、新天地での再出発。「周囲の方々の助けや温かい言葉、家族の支えでここまで来られた。できることで恩返ししたい」と前を向く。

 同市出身。料理が好きで「いずれは店を開きたい」と19歳の時、同市の田北調理師専門学校で学び、免許を取得。市内の飲食店で修業後、2014年、市内西春日町にイタリアンの店を構えた。

 常連客もでき、店が軌道に乗り始めた頃、左足のくるぶしのこぶが気になり、病院で検査して病気が判明した。治療に専念するため18年5月、いったん店を畳んだ。手術後、抗がん剤が思うように効かず、足を切断して義足をつけることを決断。その後も義足が合わなかったり、炎症を起こしたりした。入退院を繰り返した時期もあったが、「早く復活して店を再開したい」という思いが原動力になった。

 前の店が入っていた建物が取り壊され、新たな出店先を探す中で戸次本町の風情ある町並みの雰囲気に引かれた。通り沿いの築100年以上の古民家を借り、市の補助金を活用してリノベーション。8月下旬に開店した。

 店名は「食」の字から。「人を良くする料理と場所を提供したい」という思いを込めている。「農業の盛んな戸次の地域性を生かし、地元産の食材をなるべく使っていきたい」。新たにカフェタイムも設けた。

 昨年3月、前の店で働いていた萌子さん(27)と結婚。貴之さんの力になれるようにとこの5年間、調理や菓子作りを勉強してきたという。貴之さんは「地域に愛される店になるように2人で力を合わせ、足の調子を見ながらゆっくり頑張っていきます」と笑みをこぼした。

     

<メモ>

 ランチは3種類から選べるパスタに前菜盛り合わせサラダ、自家製フォカッチャ、ミニデザート、ドリンクが付くセットメニューのみ。カフェタイムは不定期。詳細は同店のインスタグラムで確認できる。義足の作り直しが必要になったため、9月のディナーは休み。木曜日定休。 

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