山寺を登る、郵便屋さん 山形中央局・笹原さん、週5回集配しポストを維持

1015段の階段を上り下りし、郵便物の集配をしている笹原昭浩さん=山形市山寺

 山形市山寺の立石寺で、半世紀以上利用されている郵便ポストがある。立石寺の関係者や観光客が投函(とうかん)するために設置されている。取扱量の減少で、全国的に姿を消すポストは増えているが、郵便局員が週5回、奥の院までの1015段の階段を上り下りし、維持している。

 このポストは山頂売店付近にある。立石寺周辺の集配を含め、山形中央郵便局の笹原昭浩さん(63)=同市門伝=が、8年前から局員として再就職し、担当している。ポストの郵便物を収集するだけでなく、立石寺関係者ら上に住む4世帯への郵便物や本紙などの新聞の配達も担っている。笹原さんは兼業農家で、友人から紹介され、この仕事に就いた。

 ポストを利用するのは、主に観光客だという。ここで投函すると、山寺の風景が描かれた消印が押される。記念になるため、絵はがきなどをここから送る人が多い。「手紙が届くのを楽しみに待っている人がいる。できるだけ早く届けたい」と、雨の日は傘を差し、雪の日はスパイクを履いてポストを目指す。夏の強い日差しの中でも軽快に30分ほどで階段を上る。

 日本郵便東北支社によると、記録が残る2007年の民営化以降、ポストは08年度が最も多く19万カ所以上あったが、21年度は17万カ所程度と減少。県内でも減り続け、直近の22年度は2185カ所となっている。通信の多様化や人口減少で、郵便物の取扱量が減少していることが影響している。

 奥の院付近までは徒歩で階段を上って集配するしかない。約10キロの果物の箱や、寺で売られる鉛筆100ダース…。笹原さんは、どんなに重い荷物も背負って運ぶ。「いつも助かってるよ」と山頂売店に新聞や手紙を届け、笑顔でねぎらわれた。「郵便を受け取る人たちの笑顔のため、きょうも頑張れる」。ポストを守り続けるためにも、笹原さんは石段を上り続ける。

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