福井県のご当地グルメ「ボルガライス」が中国進出 1人の男性が恋しがった味、海を渡り予想外の人気ぶり

ボルガライスをメニュー化した店主の呉さん(前列右端)と加藤さん(後列左から2人目)ら=中国江蘇省無錫市の「日本料理福娘」

 福井県越前市のご当地グルメ「ボルガライス」が中国進出を果たした。同市出身で中国江蘇省在住の会社員男性らが、新型コロナウイルス禍で帰国がままならなかった時期に、古里の味を求めて現地の日本料理店に調理を依頼したのがきっかけ。そのまま正式メニューに加わり、中国人の常連客の間で人気を呼んでおり、「まさかの広がり」と関係者を驚かせている。

 中国では今年初めまで、新型コロナ感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策によって厳格な行動制限が強いられていた。出国には一時隔離など困難が伴う状況で、越前市の電子部品メーカーの関連企業に勤める同市出身の加藤大貴さん(41)も日本に帰れずにいた。

 江蘇省無錫市の和食店が集まる地域にある行きつけの飲食店「日本料理福娘」を昨春に訪れた際、日本人仲間と望郷の思いを語り合う中でご当地グルメが話題に。加藤さんが「無性に食べたくなった」というボルガライスのことを話すと、「試しに作ってもらおう」と盛り上がり、女性店主の呉暁璐(ウーシャオルー)さんと共同で再現に取りかかった。

 デミグラス系ソースのオムライスにサクサクのカツが載ったボルガライスは、地元で食べ慣れている加藤さんも「味が濃くてボリュームたっぷり」と納得の一皿に。昨年5月の販売開始以降、ほかの日本人客や現地の常連客にも評判が広がり、料理宅配サービスでも多くのリピートを呼ぶようになった。

 予想外の人気ぶりに、加藤さんは、卵やカツをご飯と合わせるボルガライスの特徴が「いろんな味を足し算する中国の料理文化と共通する部分があったのかも」と推察。呉さんは「無錫市は上海からも近くいいところ。ぜひ福井からボルガライスを食べに来て」と呼びかけている。

 越前市の日本ボルガラー協会代表のボルガチョフこと波多野翼さん(38)は「中国に打って出るなんて考えてもみなかったことだけれど、個人の何げない行動で認知度が広がったのが面白い」と、そのいきさつに目を見張る。

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 協会から提供店用のポスターが贈られ、無錫市の店頭には「武生に来たらボルガライス」のメッセージが張り出された。波多野さんは「中国の大都市でボルガライスを通じて越前市のことを知ってもらえるのはすごい宣伝効果。中国からのインバウンド(訪日客)来県のきっかけになるよう期待したい」と話している。

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