「冬メロン」の夢実れ かつては出稼ぎも経験、水耕栽培試験に協力する農家の思い 青森・つがる市

メロンの水耕栽培試験で収穫作業をする山崎さん=つがる市

 青森県つがる市、地元農協などでつくる「つがるブランド推進会議」(会長・倉光弘昭つがる市長)が取り組んでいるメロンの水耕栽培事業で、2023年度から試験栽培を始めたメロン農家がいる。同市木造地区の山崎伸也さん(39)。夏が収穫期のメロンを冬にも栽培、収穫できる点に魅力を感じて挑戦。「(露地物のメロンが出回らない)冬の生産・販売体制が確立され、水耕栽培が普及すれば農家の所得増につながる」と期待している。

 山崎さんは20歳ごろ、メロン農家の親の元で就農した。20代の10年間、農作業のない冬は収入がなく「お金に困って車検代や携帯電話料を払えず、東京や名古屋などに出稼ぎに行かなければ生活していけなかった」。

 30代から徐々に安定した収入に結びつく販路を開拓。つがる市で盛んに生産されている品種・タカミが主力商品で「うちは化学肥料を使っていないので、日持ちもするし健康にいいとPRしてきた」と山崎さん。今は県内の飲食店や企業、東京の人気レストランなどが取引先で、トマトなどの野菜も出荷。出稼ぎの必要はなくなった。

 22年度、同会議から水耕栽培試験への協力を依頼された。同会議によると、普及を目指す上で、山崎さんの栽培ノウハウや販売戦略などを生かせないか考えたという。山崎さんは、農家の収入や暮らし向きがもっと良くなることを願い、協力を決めた。

 山崎さんは5~9月、同市柏地区のガラス温室内で人工授粉、収穫作業を体験。露地栽培に比べ、温度管理がある程度できる点がメリットの一つだという。つるや葉が光合成のためにどう伸びていくのかを把握することも、高品質生産の判断材料にしたい考え。山崎さんは「水耕栽培の強みは冬に生産できること。いいメロンを作れれば(全国的な産地である)つがる市の魅力アップにもつながる。冬の作業も頑張りたい」と話している。

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つがる市のメロン水耕栽培 「つがるブランド推進会議」(つがる市、地元農協などで構成)が2020年度から、「まちだシルク農園」(東京)が開発したメロンの播種(はしゅ)槽と栽培槽を同市柏地区のガラス温室内に導入し、水耕栽培試験を開始。土を使わず、液肥と水を循環させて生産する方法で、通年栽培が可能。農家の所得向上、新規就農者獲得を視野に普及を目指しており、試験では2品種が期待通りの結果となった。23年からは、新施設での生産と試験販売を行っている。

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