療養・リハビリ中の人と障害者スポーツ橋渡し 青森県理学療法士会が紹介事業

青森JOPSの練習に参加する上林さん(右端)。リハビリ担当の理学療法士の橋渡しで、チームに加わった

 青森県理学療法士会(米田良平会長)が、医療機関や介護施設で療養やリハビリを受ける人に、退院・退所後の社会参加の場として、障害者スポーツを紹介する事業に乗り出している。県内ではこれまで、医療分野から障害者スポーツへと結びつける機会が少なかった。同会は2026年に青森県で開催される全国障害者スポーツ大会(障スポ)も視野に、事業に携わる理学療法士を増やし、中長期的な障害者スポーツ参加人口の拡大にもつなげたい考えだ。

 事業の流れは、医療機関や介護施設の利用者に、現場の理学療法士が障害者スポーツを紹介。同会が、県内の障害者スポーツ関連の情報を取りまとめる「県身体障害者福祉センターねむのき会館」と連携して利用者に種目を提案し、教室やチームへの参加を打診する。スポーツに関わる機会の多い理学療法士がコーディネーターとして、初回の参加に同行する。

 事業は22年度にスタートし、これまでに10人程度がボッチャ、水泳、陸上などへの新たな参加につながった。コーディネーターは、現在23人が登録している。

 同会によると、県内で障害者スポーツに参加する機会は、特別支援学校や福祉分野からの紹介がほとんどだった。療養・リハビリ中の人に理学療法士が早くから助言することで、退院・退所後のスムーズな社会参加につなげる狙いがある。医療分野の職能団体が障害者スポーツの推進に関わる事例は全国的にも少ないとして、22年度にはスポーツ庁の委託事業の採択を受けた。

 一方で、地域によっては近くに競技団体や体験の機会がないため、希望者がいるのに参加まで至らなかった事例もあった。事業に関わる理学療法士の数も、十分ではないという。米田会長は「障害のある人と私たちが、スポーツを通じて一緒に社会参加をすることが大事。障害者スポーツ人口が増え、参加できる機会が多くなるという好循環につなげるため、理学療法士への働きかけを積極的に続けたい」と話した。

▼「またバスケができる」 事業を利用・上林さん

 青森市で活動する車いすバスケットボールチーム「青森JOPS(ジョップス)」の上林将太さん(22)は、県理学療法士会の障害者スポーツ紹介事業を通じて、今夏から本格的にチームへ加わった。

 「もともとバスケをするのが大好き」という上林さんだが、脊髄損傷のけがを負い、今後バスケはプレーできないと告げられた。1~5月まで治療やリハビリを受ける中、リハビリを担当した青森慈恵会病院(青森市)の理学療法士・角田しのぶさん(26)から青森JOPSの話を聞き「チームに入ろう」と決めた。現在は県身体障害者福祉センターねむのき会館(同市)での練習にほぼ毎回参加し、仲間たちと腕を磨いている。

 「紹介を受けなければ、地元に車いすバスケのチームがあることも知らなかった」と話す上林さん。「またバスケができる場所を教えてもらい、好きなものを失わずに済んだ。県内開催の全国障害者スポーツ大会までに、一つでも多くスキルを身に付けたい」と前を向く。

 上林さんとチームの橋渡し役となった角田さんは「運動機能を詳しく知る理学療法士が間に入ると、受け入れ先でも障害の度合いに合わせた活動を考えやすくなる。患者にとっても、新しい環境へ飛び込む心理的なハードルが低くなる」と事業の利点を強調。「上林さんへのチームの紹介が社会参加の後押しにもつながり、うれしく思う」と語った。

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