三本木農業高(青森・十和田市)の殺処分ゼロ活動題材 「いのちの花」演劇上演170回

「いのちの花」のチラシ
「いのちの花」の稽古に励む齊藤さん(左から2人目)、宮﨑さん(同3人目)ら=12日、東京都板橋区

 殺処分された犬や猫の骨を土に混ぜ、花を育てて「殺処分ゼロ」を訴える三本木農業高校(現・三本木農業恵拓高校)の取り組みを題材にした演劇「いのちの花」。劇団銅鑼(どら)(東京都板橋区)による一般向け・学校向けの公演が、2017年の初演から今夏までに170回を数えた。20日から再び一般公演が始まり、10月には作品の舞台となった青森県十和田市を訪れる。俳優たちは、ペット殺処分と向き合う高校生を演じながら「命とは」という重い問いを投げかける。

 原作は三農卒の向井愛実さんの著書「いのちの花」と、瀧晴巳さんの「世界でいちばんかなしい花 それは青森の女子高生たちがペット殺処分ゼロを目指して咲かせた花」。青森市の劇団「渡辺源四郎商店(なべげん)」主宰の畑澤聖悟さんが脚本を手がけた。

 作品には、高校生たちが県動物愛護センターの殺処分施設を見学するシーンもある。悩み葛藤しながらも、必死で犬や猫の骨をくだいて花を育てようとする生徒の姿が等身大で描かれる。板橋にある銅鑼の拠点では、公演前の稽古が行われ、出演者たちが立ち位置やせりふの表現を細かく確認していた。

 物語の中心となる5人の女子高生のうち、感情豊かなジュリナを演じるのは青森市出身の齊藤美香さん(25)。自分の性格と正反対の役柄をどう演じるか悩みつつも「素直な感情表現で周りを引きつけるのがジュリナの魅力。舞台を見た人に、ちょっとでも前向きな気持ちになってもらえたら」と話す。

 今春から主演のマナミ役を務める宮﨑愛美(まなみ)さん(25)は、訪問先の学校で、休みがちだった生徒から「舞台を見に来ることができて良かった」と声をかけられたのが強く印象に残っているという。「マナミは普通の子だけど、ペット殺処分の事実を知って行動を起こす。舞台を通じ、頑張って一歩を踏み出せば、いろんなことができると伝えたい」とほほ笑んだ。

 今回の一般講演は全国7会場で行い、6会場では手話通訳も付く。2時間弱の通訳を一人で担当する田中結夏さん(31)は「出演者と同じ世界観の中で、悩み苦しんで葛藤している様子をありのまま手話で伝えたい」と話した。

 十和田公演は10月10日午後1時半と同6時半の計2回、市民文化センターで行う。チケットは一般3千円、高校生以下千円。

 問い合わせは劇団銅鑼(電話03-3937-1101)。

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