話題作のヒロインに抜擢、原菜乃華「エネルギー源は何でもいい」

新海誠監督の映画『すずめの戸締まり』(2022年)では1700人を超えるなかから主人公の座を射止め注目を集めた、女優の原菜乃華。ネクストブレイクの呼び声高い彼女が次に挑むのは、俳優・菅田将暉が主演を務める映画『ミステリと言う勿れ』(9月15日公開)のいわばヒロイン役だ。

弱冠20歳ながら、菅田をはじめ松下洸平、町田啓太、萩原利久、柴咲コウといった豪華なキャスト陣のなかで抜群の存在感を放った彼女。同作について、そして「女優」という仕事への思いについて訊いた。

『ミステリと言う勿れ』でヒロイン役を務める女優・原菜乃華

写真/わたなべよしこ

■ すごく「瞳」が印象的な子だなって(原)

「本当にドラマは何度も繰り返して見るくらい好きで…」と、『ミステリと言う勿れ』の愛を語る原

──ドラマ『ミステリと言う勿れ』は、TVerの見逃し配信再生数が民放テレビ番組初となる3000万再生を突破し話題を呼びました。原さんは同作の大ファンだったそうですね。

本当にいちファンとして、毎週楽しみに見させていただいてました。SNSでいろんな人の考察とかも見ながら(笑)。菅田さん演じる整くんの言葉がスッと胸に入って寄り添ってくれるように感じることもあれば、叱ってくれているような感覚にもなって・・・多角的なものの見方を教えてくれる、こういった作品はなかなかないと思うんです。

あと、お芝居の面ですごく勉強になることも多くて。ドラマでは顔の寄りのカットが多くて、目線の動かし方やまばたきの回数、台詞の声の震え方だったり・・・。細かい部分をすごく丁寧に切り取っていて、心をぐっと捕まれるというか。いつか私もこの作品に出られるような役者になりたいと、ある種の目標でもあったので、オーディションには強い気持ちで臨みました。

──今回のヒロイン・狩集汐路(かりあつまり・しおじ)は、整を狩集家の相続事件に巻き込んでいく、物語のキーとなる人物です。

私が演じた汐路は、「本当の自分の気持ちがわからない」という部分がすごく強い女の子で、役作りもすごく難しかったです。迷ったときは「今、汐路に見えている自信がない」と松山博昭監督に伝えて、いろいろと話し合いをしながら作っていきました。

──監督からの具体的な演技プランなどはありましたか。

監督は「少女性は大事にしたい」とおっしゃっていていて。汐路はすごくしっかりしている部分と子どもらしいあどけなさもあって、地頭もすごく良いと思うんですけど、彼女自身の抱える傷だったり・・・そこのバランスは気をつけていました。

『ミステリと言う勿れ』 ©田村由美/小学館 ©2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

──そんな汐路ですが、物語が進むごとに、整との距離感が微妙に変わっていきますよね。そのあたりのささやかな変化、特に原さんの目の演技に、すごく引き込まれました。

うれしいです! 原作読んだとき、すごく「瞳」が印象的で、そこに思いが宿る子だなって。真っ直ぐな子どもらしい強さもありながら、ふと陰が落ちるような瞬間があったり・・・。撮影中、目力はとても意識していましたね。

■ ネガティブでも「動けること」が大事(原)

同作での印象的な台詞について「『人は弱くて当たり前だと誰もが思えたらいい』という言葉。すごくストレートでわかりやすいんですけど、希望の光が見えて、すごく良いなって」。

──子役時代から活躍されている原さんですが、「女優」としてのターニングポイントはあったのでしょうか。

そうですね・・・18歳のときですかね。大学進学かこの仕事1本にするのか、ぎりぎりまで悩みました。私は器用なタイプではないので、学業と両立はできないなと思って、それだったら退路を絶って頑張ろうって。そのときに、ひとつ覚悟が決まりましたね。

──そのステップを経た今、お芝居に対する思いなども変わりましたか?

明確にすごく変わったみたいなことはないんですけど、シンプルに貪欲になったと思います。高校を卒業してからは自分自身と向き合う時間も増えましたし、より一層頑張りたいという気持ちは強くなっています。

──過去のインタビューで、ご自身のことを「ネガティブ」とおっしゃっていましたが、そのあたりの変化はありましたか?

いえ、むしろネガティブが加速していて・・・(笑)。でも、それがすごく私的に良い方向に向かっている気がしています。不安だから準備したいし、足りないと思うから頑張れるというか。ポジティブであれネガティブであれ、向かうところに動くのが大事だと言ってもらったことがあって。エネルギーになるなら何でも良いんだと割り切れるようになりました。

初共演の菅田について「現場ですごく支えていただいて。お芝居はもちろんですけど、周りの人への気の配り方だったり、作品に対する姿勢だったり…近くでたくさん勉強させていただいた」と振りかえる原

──ご自身の性格と向き合い、さらに活躍されていったと思います。特に10代の締めくくりとなった2022年には、ドラマに映画、さらには情報番組のパーソナリティまで、さまざまなことにチャレンジされていました。この1年を振りかえってみて、いかがでしたか。

大きなことでいうと、やっぱり『すずめの戸締まり』ですかね。初めてのことでしたし、アニメもすごく好きだったので、私のせいで作品が台無しになったら・・・という思いもありました。私、自分の声が本当に嫌いだったんですでもこの作品を通じて、チャームポイントなのかもと思えるようになって、自信にもなりました。

──ご自身のステップアップに繋がった作品だったんですね。

そうですね。あの期間はいろんなことを教えてもらって、励ましてもらって・・・。たくさんの方に名前を覚えていただけるようになりましたし、お世話になった方には「成長」という形で恩返しができたらなと思っています。

自身について「とにかくインドア」と語ったうえで、「でも、もうちょっと外交的になりたいなと思って。昨年は意識的に人に会う時期を設けました」と明かした原

──8月に20歳になったばかりですが、原さんのなかでひとつの節目を迎えられたかと思います。どのような意識をもって女優として「成長」していきたいですか。

常に柔軟でありたいです。周りの意見を素直に聞けるような心の状態でいたいなと。社会経験も豊富ではないですし、自分だけの創造力では限界があるところがあると思うので。たくさんの人にいろいろと教えてもらいながら、私なりの正解を見つけていきたいです。

© 株式会社京阪神エルマガジン社