●自治振興会、復活へ奔走
全国名水百選に選ばれている砺波市指定文化財「瓜裂清水(うりわりしょうず)」(同市庄川町金屋)の水琴窟(すいきんくつ)が7月の豪雨後、情緒豊かな音色を響かせなくなった。関係者によると、豪雨で清水に流入した土砂が瓶(かめ)の中に入り込んだ可能性がある。38年前に水琴窟を設置した地元の長寿会は昨年解散しており、代わりに東山見地区自治振興会役員が「音風景」の復活を目指して奔走している。
水琴窟は、底に穴を開けた瓶を地中に埋め、瓶にたまった水に水滴が落ちると「キーン」「コーン」と琴に似た澄んだ音色が内部で反響し、乱れた心を整え、癒やし効果があると言われる。
瓜裂清水の上に位置する岩黒団地の長寿会が1985(昭和60)年10月に水琴窟を設置し、癒やしスポットとして住民らに親しまれてきた。
ところが、7月に富山県内を襲った記録的大雨で近くの山から瓜裂清水に大量の土砂が流入。土砂を除去して清水は元の状態に戻り、早朝から名水を求める人が次々と訪れているが、水琴窟の音色は以前のようにうまく響かなくなったという。
地元関係者によると、水琴窟を設置した長寿会が昨年解散し、設置管理者がいない状態になった。一方で名水の水琴窟の音色を楽しみにしている住民も少なくなく、その状況を見兼ねた東山見地区自治振興会の宮窪大作会長が復活に向けて動き出した。
水琴窟は、庭園のない住宅が各地で増え、新しく作られる機会が減り、技術の継承が課題となっている。
宮窪会長は設置当時の設計図を見つけ出し、音がうまく響かない要因などを探っている。今後は瓜裂清水の保存会と相談し、水琴窟の瓶や石材などを提供した業者、造園業者にも声を掛け、音の復活に向けて最善策を練る予定にしている。
毎日早朝に瓜裂清水の清掃を欠かさないという宮窪会長は「ひしゃくで名水をすくって、すてきな音を楽しみにしている住民もいるので、なんとかして復活させたい」と話した。
★瓜裂清水 砺波市庄川町金屋にある湧水。約600年前に瑞泉寺(南砺市井波)を開いた綽如上人(しゃくにょしょうにん)が岩黒で休憩した際、連れていた馬のひづめが沈み、その跡から清水が湧き出し、村人が献上した瓜が自然に裂けるほどの冷たい水から命名されたと伝わる。ミネラルが豊かでおいしい水として知られる。1985(昭和60)年3月に名水百選の一つに指定され、87年3月に砺波市の指定文化財に選定された。