「冷房入れて」と頼むと断られた 公立の体育館、冷房を入れる基準どうなっている

冷房の運用にばらつきがある体育館。施設の広さや利用内容も多様で、統一的な運用は難しそうだ(京都市北区・島津アリーナ京都)

 京都府立の体育施設が冷房を入れる基準はあるのか―。体育館の使用中に冷房を入れてほしいと頼んだところ断られたという府内の男性から、冷房のスイッチを入れる基準と根拠を調べてほしいとの依頼が、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に届いた。そろそろ季節の変わり目の微妙な時期。暑いと感じても冷房を入れてもらえない日があるのだろうか。

 依頼主の60代男性は運動のためグループで公立体育館をよく利用している。疑問を抱いたきっかけは、7月初旬に府が所管する京都テルサ(京都市南区)のスポーツホールを利用した時のこと。動くうちに暑くなり冷房を入れるよう管理者に頼んだが、「室温28度以上、湿度70%以上が基準になっている」と断られたという。

 一緒に運動を楽しむ仲間には高齢者が多く、男性は「熱中症に気を付けるようにと行政も注意喚起している。事故があってからでは遅く、柔軟に対応してほしい」と話す。

 スポーツホールのホームページには、確かに冷房の運用基準が明記されている。稼働期間は「6~9月末日」、利用基準は「室温28度以上、湿度70%が継続するとき」とある。ただし「環境面や特別な配慮等が必要な場合」は、基準にかかわらず判断するとしている。

 同スポーツホールを運営するノーザンライツ・コーポレーション(東山区)によると、冷暖房の基準を設けたのは今年6月。元々は冷暖房を使った場合のみ費用を徴収していたが、施設使用料に含むよう料金体系を変えた際に基準を決めた。

 背景にあったのは、利用者間で生じがちだったトラブルだ。ホールは半面ずつ複数の団体が利用する場合もあるが、空調は一括管理のため、一方の団体が冷暖房を使用する場合に費用をその団体のみが負担するか、もう一つの団体と割り勘にするか、もめるケースが多かったという。

 担当者は「(料金体系の変更で)季節を問わず冷暖房費を徴収することになる。利用者間の公平性を担保するため運用に一定の基準を設けた」としつつも「絶対的なものではない」と説明する。

 基準の「室温28度、湿度70%」という数値については、暑さ指数や不快指数で熱中症の危険が増す値を参考に決定したといい、実際には湿度は補助的な数値と捉えて室温28度を超えれば冷房を入れているという。

 他の府立体育館はどうなのか。府によると、冷房付きの主な体育館は島津アリーナ京都(北区)、伏見港公園(伏見区)、山城総合運動公園(宇治市)。いずれも冷暖房の運用に統一した基準はなく、施設それぞれで対応しているとのことだった。

 ただ京都テルサのスポーツホール以外は、冷暖房を使用した場合にのみ料金を徴収している。例えば島津アリーナ京都は、最も広い第1競技場(約2240平方メートル)で冷房を使うと、1時間で1万5300円の追加料金が必要だ。島津アリーナ京都の担当者は「暑さ指数を示して注意喚起はしているが、中には『冷房料が高い』と入れずに我慢する利用者もいます」と話す。

 そもそも同じ府の施設なのに、なぜ違いがあるのか。府に尋ねると、施設の種別の違いによるものという。島津アリーナ京都や伏見港公園、山城総合運動公園は指定管理者が運営し、料金の徴収については条例がある。一方、京都テルサは民間に貸し付けており、運営団体の裁量がより大きいとのことだった。

 熱中症対策を呼びかける府の担当課は「静止状態と運動中とは熱の持ち具合が異なるため、体育館で28度が適温かを明言するのは難しい」と言葉をにごしつつ、「運動の強度や個々人の体力などを総合的に見て対応してほしい」としている。

© 株式会社京都新聞社