今夏の猛暑、酪農にも影響 熱中症で牛29頭死ぬ、生乳生産量も減少 東北町、六ケ所村(青森県)

牛舎内で飼っている乳牛を眺める五十嵐さん。この夏、設置された大型扇風機はフル稼働だった=20日昼ごろ、六ケ所村倉内

 ゆうき青森農協(本所東北町)は20日、青森県東北町と六ケ所村で7、8月に牛29頭が熱中症で死んだことを明らかにした。同日、同町内で行われた会議で説明した。死んだ牛は昨年7、8月の91頭から、今年は149頭に。死因が心不全や不明などの牛の中にも暑さのために餌が食べられなくなり、体力が落ちて死んだ牛がいるとみられるという。

 乳牛を飼育しているのは8月1日現在で、東北町が29戸で1769頭(経産牛)、六ケ所村が27戸で1977頭(同)。8月の両町村の生乳生産量は177トン(6.2%)減少した。

 同農協によると、牛舎内が高温で採食量が減り、乳量が落ち込んだほか、十分に水を飲めなかった牛が大きな影響を受けているという。ほかに、牛舎内の高温と湿度上昇による環境悪化で乳房炎などが発生し、乳量減少とともに乳質も悪化している。

 同村倉内地区で、200頭近くを飼育する五十嵐洋臣さん(76)は「酪農歴55年。こんなひどい暑さは初めてだ」と嘆く。

 乳牛・ホルスタイン種は暑さに弱い。「適温は20度ほど。気温が30度、35度となれば、人間でいえばサウナに入って生活しているのと同じ感覚だ」。牛舎の大型扇風機60台をフル稼働し、人工的に霧状の水を吹きつけるなど暑さ対策に追われたが、この2カ月で暑さが影響して死んだとみられる乳牛が3頭いた。

 餌を食べられず、食欲が落ちる乳牛も相次いだ。搾乳量は昨年同時期と比べて2割ほど減った。

 猛暑は来年以降も続く可能性がある。電気代上昇や飼料価格の高騰はこれからも避けられない見通しだ。「行政側には何とか支援をお願いしたい」と話した。

 同町北栄地区の酪農家・小川寅勝さん(32)は「扇風機をたくさんつけていたが、それでも牛の体温が上がり、餌を食べられなくなり、乳の出が少なくなった」と話す。暑さと雨不足のため、牛の餌となる牧草が生えなくなる影響も受けたという。

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