社説:岸田政権と女性 形ばかりの「活躍」では

 岸田文雄首相が掲げる「女性活躍」の内実が問われている。

 先日発足した第2次再改造内閣では、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用したが、その狙いについて「女性ならではの感性や共感力を生かしてほしい」と述べた。

 その一方、再改造後に行った副大臣と政務官計54人の人事では女性がゼロだった。ひな壇に男性ばかりの内閣幹部が並ぶ姿は、これで先進国なのかと思わせるほど奇異に映った。

 政権の浮揚や政治的なパフォーマンスを狙う岸田氏の本心がちらつき、見せかけだけの女性登用ではないかと疑わざるを得ない。

 「女性ならでは」発言には、各方面の識者から「対等な存在と見ていないことが透けて見える」「国籍や性別などの属性で相手を決めつけるのは、差別だという世界の潮流に逆行する」などとの指摘が相次いだ。

 岸田氏は「多様性の確保が重要であることや、個性と能力を発揮して職務に取り組んでほしいとの趣旨で述べた」と釈明したものの、後付けの感が否めない。性別に対する時代錯誤の固定観念は改めねばならない。

 誇らしげにアピールした女性閣僚数も、比率でみれば約25%にすぎず、不十分である。

 岸田氏が6月に決めた「女性版骨太方針」では、上場企業に対して2030年までに女性役員の比率を3割以上にするよう求めた。民間に言うなら、まず内閣が範を示すのは当然ではないか。

 まして閣僚育成のためにも重要な副大臣、政務官に女性がいないのは理解に苦しむ。前任の女性11人を留任させたり、民間から登用したりする手もあったろう。

 政権の基盤を安定させるため、自民党各派閥の要求を優先したのは明らかだ。

 党内には「女性議員が少ないから仕方がない」との声も聞かれるが、全体の約1割にとどまるのは女性候補を増やす努力を怠ってきた結果にほかならない。

 候補者の男女均等を目指す政治分野の男女共同参画推進法にのっとり、政権党として候補者選定にクオータ(人数割り当て)制を導入してはどうか。

 政府・自民党が打ち出す女性活躍政策や少子化対策には、経済再生のパーツのように、女性や出産をとらえる意識もうかがえる。

 性差に関係なく誰もが暮らしやすい社会を目指すジェンダー平等の視点を、あらゆる施策の根底に置くことを求めたい。

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