取材班に届いた不幸のチェーンメール 10年前から続く拡散 転送は「デマの共犯者」になる恐れ

あなとちのLINEアカウントに届いた「不幸のチェーンメール」の一部(画像は一部加工しています)

 下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)に、1通のチェーンメールが届いた。「12時間以内に20人に回さなかったら足をうばいに行く」。何とも不気味な文面だが、調べてみると、10年以上前から拡散されていたようだ。どうしてチェーンメールが拡散してしまうのか、どんな危険性があるのか。1件の投稿をきっかけに調べてみた。

 あなとちに届いたのは、正確にはチェーンメッセージ。LINE投稿アカウントに届いたメッセージは、交通事故で両足を失った人物が筆者という設定だ。要約すると、親友の「りんちゃん」に裏切られた筆者は、恨みを晴らしに行きたい。そこで「誰かの足が欲しいの」と読者に訴える。その上で、転送しないと「夜の0時ぴったりにあなたの足を貰いにいきます」と迫ってくる。

 このチェーンメッセージ、通信事業者などで組織する「一般財団法人日本データ通信協会」が、「ただの作り話なので、放っておいても何も怖いことは起こりません」と一蹴している。同協会の迷惑メール相談センターが運営する「撃退!チェーンメール」というウェブサイトの記事に書かれており、何と掲載時期は2010年5月。約13年前からウェブの海を漂う“年代物”のようだ。

記載の連絡先はアクセス厳禁

 このメッセージには「嘘だと思うならこれにかけて下さい」と電話番号が記されている。でも気をつけてほしい。協会の運営するサイトは、チェーンメールなどに記載の連絡先について「絶対に連絡してはいけません」と禁じている。無関係な第三者の連絡先が、嫌がらせで勝手に使われている可能性が高いためだという。

 チェーンメール記載の連絡先は嫌がらせのためだけとは限らない。元栃木県警本部長で、サイバー犯罪に詳しい日本大危機管理学部の金山泰介(かなやまたいすけ)特任教授は「チェーンメールに限らず、出所不明のメールに記されたリンク先などは、マルウエアの感染や(個人情報を奪う)フィッシング、詐欺などの犯罪を狙った恐れがある」と警告する。

 冷静に考えれば、すぐに怪しさが分かりそうなチェーンメールだが、なぜ拡散してしまうのか。

 NPO法人県カウンセリング協会の臨床心理士丸山隆(まるやまたかし)さんは、「自我が確立していない思春期の子どもだと、『やらないと大変なことになる』と言われるほど、『本当かも』と思ってしまう」と指摘する。不安が強い子どもほど引っかかってしまう傾向があるそうだ。

 丸山さんも高校の教員時代、生徒から「こんなメールが届いた。怖い」と相談されたことがある。その際、「よし俺に送れ、大丈夫だ」と伝えたという。丸山さんは「本人の不安は本人が感じる通りなので、『おびえるな』とは言わないで。大人が『引き受けるから大丈夫』と言ってあげることが大切」と対処法をアドバイスしてくれた。

転送促す内容なら全てチェーンメール

 日本データ通信協会がまとめた啓発冊子、「撃退!チェーンメール&メッセージ チェーンメール対策BOOK 2023年度版」によると、チェーンメールは「不幸の手紙系」だけでなく種類はさまざま。「送ると受験に合格する」「人助けになるから広めて」などの文面が確認されている。だがどんな文面でも、誰かに転送を促す特徴は共通しているという。

 冊子では、「メールの内容がデマだった場合、(転送すれば)不特定多数の人にウソを拡散した共犯者の一人になりませんか」と読者に問いかけている。

 さらに総務省によると、災害時にデマを拡散するチェーンメールは、通信環境の負荷になり、命に関わる連絡が滞る恐れもある。もしあなたの手元に届いたら-。冷静に考えて行動してほしい。

 協会の迷惑メール相談センターは、相談先を設けている。

(チェーンメールの内容は原文のままです)

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