北ア・不帰嶮の遭難男性救助 悪条件、懸命の捜索 県警山岳警備隊

救助現場。山岳警備隊員が沢近く(赤い丸印)にいた水野さんを見つけた(富山県警提供)

 富山、長野県境の北アルプス・不帰嶮(かえらずのけん)付近(標高約2080メートル)で12日に遭難した男性登山者が8日ぶりに救助されてから一夜明けた21日、富山県警山岳警備隊員が霧に覆われる悪条件の中での懸命の捜索活動を振り返った。県警山岳安全課は秋山シーズンに向け「身の丈にあった登山計画を立ててほしい」と呼び掛けた。

 黒部署によると、救助されたのは埼玉県川越市諏訪町、会社員水野孝太さん(49)。頸髄(けいずい)損傷の重傷を負い、黒部市民病院に入院しているが、命に別条はないという。

 水野さんを見つけた谷本悠基巡査部長(41)とヘリで引き上げた中村直弘警部補(48)が21日、県警本部で報道陣の取材に応じた。

  ●視界不良、音が反響

 谷本巡査部長は17日から現地で捜索に当たり、20日に望遠鏡で水野さんを見つけた。無線で県警ヘリ「つるぎ」に伝え、救助につなげた。現場の状況について霧に覆われて視界が悪かったとし「水野さんの声が聞こえるが、音が反響して居場所が捉えられなかった」と振り返った。

 中村警部補は20日に県警ヘリ「つるぎ」で現場に向かい、水野さんを引き上げて救助。「体が震えていて低体温症のような症状がみられた。助かって良かった」と述べた。水野さんは繰り返し「ありがとう」と話していたという。

 水野さんが見つかった場所は急な岩場に挟まれた沢だった。谷本巡査部長は「水を確保していたことが良かったと思う」と話した。

 水野さんは10日に単独入山し、道に迷って12日から行方不明になった。登山者から17日に「助けて」と声が聞こえるとの通報があり、県警山岳警備隊が捜索を開始し、20日午後に発見、救助した。

  ●残りは水1本だけ 12日滑落、「ぎりぎり」

 黒部署によると、発見時に、残っていた口にできる物はペットボトルの水1本だけで「ぎりぎりでの救助」だったという。

 水野さんは会話もでき「12日に登山道から滑落した」と説明している。10日から2泊3日の予定での入山だった。食料は弁当1個とゼリー、ドライフルーツなどしか持っておらず、これらを食べて飢えをしのいだとみられる。

救助活動に当たった山岳警備隊員=富山県警本部

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