社説:国連総会 機能改革で横暴止めよ

 世界の「危機」に立ちすくむ国連の存在意義が問われている。

 国際法を踏みにじり、ロシアが続けるウクライナ侵攻に対し、有効な手だてを打てないままだ。紛争解決の要である安全保障理事会は、当事国ロシアが常任理事国として拒否権の行使を繰り返し、機能不全が著しい。

 今年の国連総会は、ウクライナのゼレンスキー大統領が侵攻開始後初めて対面出席した。「侵略者を倒すため団結を」と呼び掛け、ロシアの拒否権について「悪用され、国連を行き詰まりに追い込んでいる」として剥奪すべきだと訴えた。

 改めて侵略阻止に向け、国際社会の結束を高めたい。

 ただ、昨年の総会でのビデオ演説は議場総立ちの拍手を受けたが、今年は空席も目立った。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国で距離を置き、中立の姿勢を示す国が少なくない。

 1年半が経過しても解決は見通せず、「支援疲れ」が指摘されている。欧米がウクライナを特別扱いし、他の地域の紛争や食料不足などへの対応を軽視しているとの不満もあるようだ。

 米国と覇権を争う中国はロシアと歩調を合わせ、欧米と中ロの分断と対立の深まりが影を落とす。

 今総会は中ロだけでなく、英国やフランスも首脳が参加せず、常任理事国で出席したのはバイデン米大統領だけだ。国連の地盤低下を象徴しているのではないか。

 グテレス国連事務局長は「改革を実現しなければ国家間の分断がさらに広がる」と危機感を訴えた。平和と協調の機能を再生し、強化できるか重大な岐路にある。

 国連は昨年、拒否権を行使した常任理事国に説明義務を課す総会決議を採択した。拘束力はないが、中ロは北朝鮮への制裁強化決議案などで拒否権行使の説明に追い込まれた。さらに改革へ踏み込む足場としたい。

 安保理の非常任理事国に今年復帰した日本も、岸田文雄首相が演説で拒否権の行使抑制や理事国の拡大などの改革を訴えた。

 ただ、拒否権の制限は、国連憲章を改正するため常任5カ国を含む全加盟国の3分の2の批准という高い壁がある。総会の機能強化を含め、具体的な改革案を提示し、賛同の輪を広げてほしい。

 岸田氏は併せて核軍縮の議論促進も打ち出したが、核保有する米英仏の既得権益や抑止力に依拠する姿勢では説得力を欠く。

 気候変動、貧困など喫緊の課題解決へも役割を果たしたい。

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