乳児かみつきで誤認逮捕の母「警察官に自白強要された」大津地裁で損賠訴訟

大津地裁

 大津市の自宅で生後2カ月の息子にかみついてけがを負わせたとして滋賀県警に逮捕されたが、後に別人の歯型を証拠にした誤認逮捕だったことが判明した母親(24)が、県と国に計約300万円の損害賠償を求めた訴訟の第2回口頭弁論が9月22日、大津地裁(池田聡介裁判長)で開かれた。母親が出廷し、県警の取り調べ段階でいったん自白したことについて「警察官に強要された」と訴えた。

 母親は2019年10月、乳児の腕の傷痕と母親の歯型が一致したとする鑑定結果などを基に傷害容疑で逮捕された。大津地裁での公判中、県警が別人の歯型と取り違えていたことが判明。大津地検は20年9月に起訴を取り消し、当時の県警本部長は誤認逮捕を認めて県議会で謝罪した。

 母親は21年4月、県と国を相手に提訴した。裁判で母親は、逮捕前の任意の取り調べで否認から自白に転じた点について、大津署の巡査部長(当時、現警部補)から「歯型を提供して何もばれないと思ったのか、警察を試してんのか」「自白すれば子どもは返ってくる」などと言われて虚偽の自白を強要されたと主張している。

 県側は歯型鑑定の誤りは認めたものの、違法な取り調べはなかったと主張、国側は検察官の起訴・勾留判断に過失はなかったとしている。

 この日の弁論では、母親を取り調べた巡査部長が最初に証人出廷し、強圧的な言動や利益誘導については「そういう事実はない」と否定した。一方、母親の代理人が、母親が自白した時にどのような取り調べをしたのかを問いただすと「覚えていない」と繰り返した。

 続いて母親が証言台に立ち、任意の取り調べにもかかわらず、家族との面会や電話ができず、次第に孤立感を深めるようになってうその自白をするに至ったと説明。「あるはずのない証拠ができあがっていて、諦める心になっていた。認めた方がいいんじゃないかと思った。警察という権力に盾突くことが怖かった」と当時の心境を振り返った。巡査部長のこの日の証言に対しては「『覚えていない』という発言が多く、謝罪がなかったのが残念だった」と述べた。

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