「全部直しても6割ぐらいの収穫量に」歴史あるワサビ田も昔の姿には戻らず…いまだ各地に爪痕残る 台風15号 9月23日で1年

静岡市を中心に甚大な被害をもたらした台風15号の接近から9月23日で1年となります。川の氾濫などで土砂が流れ込む被害のあった山間部は復興が進む一方で、いまもなお、各地で爪痕を残しています。

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<油山温泉元湯館 海野加奈子女将>
「たった一晩で、大雨で、建物内がすべて土砂で埋まってしまい、まったく別のものに変わってしまった」

静岡市葵区の市街地から北に約13キロの山間地にある油山地区。この場所で温泉旅館を営む海野加奈子さんです。

2022年9月、豪雨の影響でそばを流れる油山川が氾濫。海野さんが夫婦で営む旅館には、大量の濁流が窓や壁を突き破って、1階に流れ込みました。当時、従業員2人と宿泊客4人がいましたが、周辺の道路は寸断。海野さんも消防のヘリによって救助されました。あれから1年が経ちます。

<油山温泉元湯館 海野加奈子女将>
「みなさんに本当に支えられた1年だった気がします。更地になりまして、ようやく全体の半分ぐらいまで復旧が進んできたかなと思います」

旅館は、2023年5月に解体作業がはじまり、8月末に更地となりました。被害の大きさなどから復旧作業にかなりの時間を要するため、同じ場所で旅館を再建するのは難しいと考えていました。

しかし、海野さん夫婦の背中を押したのが旅館の再建を願う声でした。知人の提案で始めたクラウドファンディング。2022年10月から開始すると2か月間ほどで500人以上から支援をうけ、約700万円が集まりました。さらに、静岡県が油山地区の砂防ダムの建設に着手したことで、海野さん夫婦は再建に向け、決意を新たにしました。

<油山温泉元湯館 海野加奈子女将>
「県や行政に、油山地域の支援もしてもらい、安全面からだいぶよくなるんじゃないかなというところで、はっきりとはいえないけど、何かわたしたちにみなさんに恩返しできることをやっていけたら」

県によりますと、台風15号の建物への被害は、全壊8棟、半壊2244棟、床上浸水1976棟などとなっています。河川や道路への被害は562カ所にのぼり、平成以降、最大規模となりました。

静岡市清水区の山間でワサビを栽培する農家の山崎貴正さん。江戸時代から続くという歴史ある生産地ですが、台風15号により石垣などを押し流し、壊滅的な状態になりました。

台風被害から1年。被害のあったワサビ田はショベルカーなどの重機が入ることはできず、3割ほどしか復旧が進んでいませんでした。300人を超える仲間の支援をうけ、復旧はすすんだものの、被害前の姿にはもう戻らないといいます。

<ワサビ農家 山崎貴正さん>
「また災害のリスクが高いので、こういうふうに水路に変えたってのがある。変わりますね。6割ぐらいの収穫量になるんじゃないですか。全部、直しても」

ワサビ農家の山崎貴正さんは今後の台風や大雨に備え水路を拡充。植えた苗を守っていくため、収穫量が減ることを覚悟をした苦渋の決断だったといいます。

<ワサビ農家 山崎貴正さん>
「(すべての復旧には)たぶん今年度では無理なので、あと3年ぐらいはかかると思います」

平成以降、最も大きな被害を及ぼした台風15号。1年が経ち、復旧への見通しは立ったものの、いまだその爪痕は消えません。

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