身に着ける漆器 輪島にUターンの浦出さん、輪島塗職人と製作 第1弾はピン、ブローチ

輪島塗の技法を駆使したラペルピンを紹介する浦出さん

 輪島市出身で8月に東京からUターンした浦出真由さん(42)=同市稲舟町=が、同世代の若手輪島塗職人とタッグを組み、「おしゃれに身に着ける漆器」をコンセプトにした商品開発に乗り出した。漆器としてだけでなく、ファッションとしても生活に取り入れてもらい、幅広い世代に魅力を伝えていく。第1弾として襟元を飾るラペルピンとブローチを完成させた。

 父親が漆芸家の家庭で育った浦出さんは輪島高、都内の短大を卒業後、インテリアショップやギフト会社で働き、商品開発やカタログ制作に約20年携わった。

 昨年帰省した際、伝統を守りながら、新しいモノづくりの挑戦を続ける友人の職人や作家の話を聞いたことがきっかけとなった。輪島塗の振興のため、自分もこれまで培った経験や人脈を生かして「役に立ちたい」と一念発起、Uターンして輪島塗などを扱う会社「ヌシヤ」を起こした。

 伝統工芸をおしゃれ用品として使ってもらえば多くの人の目に触れると考え、手掛けているのは「身に着ける漆器」の開発だ。

 第1弾で商品化したのはリボン型のラペルピンとブローチ。県木「能登ヒバ」(アテ)を使用するなど天然素材にこだわり、輪島塗の伝統技法を駆使して仕上げた。

 木目と生漆のつやを感じられる「拭き漆」と、地の粉を混ぜた漆による下地塗り、中塗り、研ぎ、上塗りを施した「本塗り」の二種類を用意し、蒔絵(まきえ)による名入れやオーダーメードにも対応する。今後は、アクセサリーや文房具などの商品展開を予定する。

 輪島塗の昨年度の生産額は24億円で、ピークだった1991(平成3)年度の180億円と比べ、7分の1に落ち込んでいる。

 浦出さんは仲間の職人たちと取り組むプロジェクトを「WAJIMANU RE BORN(わじまぬ り ぼーん)」と名付けた。輪島塗の「再生」に、おしゃれに取り入れやすい「リボン」を掛けている。浦出さんは「若い世代で漆器業界を引っ張っていきたい」と意欲を語った。

 インターネットを通じて資金を調達する「クラウドファンディング」で事業への賛同を呼び掛けている。

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