社説:森友文書「不開示」 改ざんの真相、明らかにせよ

 公務員の仕事に誇りを持ってきた夫を自殺に追い込んだ改ざんの真相を知りたい―。遺族として当然の願いが、なぜこうも踏みにじられ続けるのか。

 森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが、関連文書を不開示とした財務省の決定取り消しを国に求めた訴訟の判決で、大阪地裁は請求を棄却した。

 関連文書は同省から大阪地検特捜部に提出されたものだ。判決は文書が存在するかどうかも明らかにしなかった財務相らの決定を適法と判断した。

 森友問題では、これまでも真相を闇に葬ろうとするかのような国の対応が繰り返されてきた。追認するような今回の判決も納得できるものでなく、雅子さんが控訴したのは当然だ。

 判決は、文書を開示すると、特捜部の捜査の手法や対象、関心事項が推知され、「将来の刑事事件の捜査や、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐れがある」とした。

 佐川宣寿元国税庁長官らは有印公文書変造・同行使や背任などの疑いで刑事告発されたが、特捜部は不起訴とした。捜査は終わっており、文書公開の影響はない。

 情報公開法で「不開示」はあくまで例外で、原則は「公開」である。そもそも開示を求めたのは特捜部の調書などではなく行政文書であり、「将来の捜査」まで言及して不開示とするのは検察の言い分の丸飲みではないか。

 行政の裁量を過大に広げ、国民の知る権利をないがしろにすると言わざるを得ない。

 改ざんは、安倍晋三元首相の「私や妻が関わっていれば総理も国会議員も辞める」との国会答弁が引き金になったとされる。安倍氏への忖度(そんたく)があったとの見方があるが、関係者は口をつぐんだままだ。

 雅子さんが国と佐川氏に損害賠償を求めた訴訟では、赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」が開示されたが、黒塗り部分が約400カ所もあった。具体的な指示系統や実態を明らかにするために求めたのが今回の文書開示だった。

 国に対する訴訟は、国が請求を全面的に受け入れる異例の「認諾」をして裁判を打ち切った。佐川氏への損害賠償請求は昨年11月、大阪地裁に退けられ、控訴審では佐川氏への尋問が認められなかった。

 佐川氏は「刑事訴追の恐れ」を理由に国会での証言を拒み、不起訴後も公の場で語っていない。改ざん発覚から5年半が過ぎても、省内処分だけで誰一人として法的責任を問われず、説明すらしていない。

 国民の政治不信は深まるばかりだ。全容解明には関連文書の公開が不可欠であり、政治の責任で真相を明らかにすることを改めて求める。

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