専業主婦の料理が口コミで広がり一念発起…福井に居酒屋オープン 飲食店展開「ぼんた」がバックアップ

バックアップ事業を活用して起業した新井さちこさん(右)とぼんたの齋藤敏幸社長=福井県福井市大手2丁目の「ななと実」

 飲食店展開のぼんた(本社福井県福井市大宮1丁目、齋藤敏幸社長)は、一人で運営できる小規模飲食店の開業に向けたバックアップ事業を始めた。ぼんたが物件の内装や調理設備を整備して賃貸し、開業後は経理などの事務も担う。出店者が運営に専念できるビジネスモデルを確立することで、県内の飲食業界の盛り上げを図る。まずは福井市内で11月上旬までに3店舗オープンする予定だ。

 9月14日に福井市大手2丁目で開店した居酒屋「ななと実」。カウンター10席の落ち着いた店内で、女将(おかみ)の新井さちこさん(56)が、お酒に合うおばんざいを提供している。

 東京出身の新井さんは結婚後、県内の夫の実家で専業主婦として料理に励むうち、福井の食材の豊かさを知った。「おいしい」と喜ぶ家族らの笑顔に満足する一方、社会で働いた経験が乏しいことがずっと劣等感だったという。「対価を得て社会に認められる仕事がしてみたい」と、昨年11月から鯖江市内のコミュニティースペース「La Tempo(ラテンポ)」で月1回、チャレンジ店を運営。料理の腕前が口コミで広がり、常連客もでき自信が芽生えたときにバックアップ事業を知った。

 バックアップの対象は15坪程度の物件。ぼんたが賃貸契約を結び、出店者の意見も取り入れながら600万~1千万円程度で内装工事も行う。出店者は150万~300万円程度の保証金をぼんたに支払えば、当面の運転資金だけで開業できる。基本5年契約。契約期間内に閉店しなければ、保証金は返金される。

 ぼんたは各店舗の売り上げから仕入れやバイトの人件費などを支払い、家賃、光熱費などの経費と一定の手数料を差し引き、収益を出店者に渡す仕組み。毎月150万円程度の売り上げがあれば、40~50万円の収益が生まれるよう経営指導も行う。

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 新井さんは「未経験の経理が不安だった。借り入れなしで開業できた。バックアップ事業がなければ、夢は夢のままだった」と話す。齋藤社長は「県内の飲食業は、コロナの打撃から立ち直れていない中で原料高騰、人手不足といった新たな逆風にあえいでいる。北陸新幹線開業後の観光への危惧から、福井の食文化を守るために始めたプロジェクト」と話している。

 11月上旬には福井市内でラーメン店、鉄板焼き店もオープンする予定。

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