〈奥能登国際芸術祭2023〉復興アートが迎え 作品も被災乗り越え

屋根瓦が修理された旧衣料品店に独特の世界観が演出された「ラ・ティエンダ・マエノ」=珠洲市飯田町

  ●鑑賞者「会場巡りでエールを」

 奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)は2日目の24日、好天が広がった会期初の日曜に、珠洲市内には遠来から多くの人が足を運んだ。最大震度6強の揺れを観測した5月の奥能登地震では多くの展示会場が被災、場所の変更を余儀なくされたり、修繕が必要になったりした。そうした復興アートも人気を集め、鑑賞者からは「作品巡りで珠洲を後押ししたい」との声が上がった。

  ●2日目1400人

 飯田町の「La tienda Maeno(ラ・ティエンダ・マエノ)」は、かつて祭り装束の「どてら」を扱っていた旧衣料品店をカラフルに彩った。地震で屋根瓦が崩れ、修繕された建物だ。

 横浜市から妹と二人で訪れた大学教員の椛田(かばた)ちひろさん(44)は「地震があったことを感じさせない作品。駐車場は車がいっぱいで、活気にあふれている」と話した。

 実行委員会の推計では、2日目の各会場の鑑賞者は約1400人となり、初日(約1130人)を上回った。一番人気は民具や生活用品を現代アートとして展示するスズ・シアター・ミュージアム「光の方舟(はこぶね)」(大谷町)で、能登外浦を望む敷地には「石の卓球台」が設置されている。

 2021年の前回芸術祭から常設されている卓球台は、もともと内浦の飯田湾に面した場所にあったが、地震による陥没で移設された。金沢市松島町の吉道渉さん(43)は卓球台で妻とラリーを楽しんだことを振り返り「作品を移動させ、今回も展示してくれたスタッフに感謝したい」と笑顔を見せた。

 実行委事務局によると、空き家に無数のアクリル棒を差し込んだ「あかるい家」(正院町飯塚)や乾漆技法を駆使した作品「触生」(蛸島町)、天井に漁網を張り巡らせた「流転」(宝立町春日野)などの展示会場が被災して修理された。

 17年、21年の過去2回の芸術祭でも珠洲を訪れたという長谷川清彦さん(67)=愛知県江南市=は「地震でどうなるか心配だったが、開催にこぎ着けてくれてうれしい。珠洲へのエールを込めて作品を回りたい」と語った。

© 株式会社北國新聞社