吉永小百合さん「大変幸せ」 長崎・五島で語った映画、平和への思い 【インタビュー】 

「五島の皆さんに見てもらえるのは大変幸せ」と舞台あいさつをする吉永さん=五島市、福江文化会館

 俳優の吉永小百合さんが、全国公開中の主演映画「こんにちは、母さん」(山田洋次監督)上映会のため、長崎県五島市池田町の福江文化会館を訪れた。「五島の皆さんに見てもらえるのは大変幸せでうれしく思う」と舞台あいさつ。終了後、長崎新聞社のインタビューに今作品や家族、平和への思いを語った。

 -昨年の「いのちの停車場」上映会に続いての来島。映画館のない五島で新作の披露となった。
 (2回の上映会で計)2千人以上の方に来ていただいた。映画館がない地域は全国にたくさんあり、作る側が出向く態勢ができるといい。今回実現できて喜んでもらえたと思う。映画館の数が減って、映画を自宅やスマートフォンで見たり、(途中で場面を)飛ばしながら見るのがはやったりしていると聞くと、何とか(映画館を)守りたいという思いが強くなる。
 
 -映画では東京の下町で暮らす令和時代の家族を描いた。家族の大切さについて伝えたいことは。
 一緒に住んでいても離れていても、助け合っていこうと心を通わせることが大事。今はAI(人工知能)や機械、インターネットに翻弄(ほんろう)され、本当の気持ちで交流することができにくくなっている。何より心を通わせる世の中であってほしい。
 
 -「母べえ」(2008年)、「母と暮せば」(15年)に続く“母3部作の集大成”とも言われる。
 今回の原作は劇作家、永井愛さんの戯曲で78年前の東京大空襲を描いている。映画では田中泯さん(大空襲を経験したイノさん役)が体験を語るシーンがある。「母べえ」や長崎原爆をテーマにした「母と暮せば」も、やはり私たちが忘れてはいけない戦争の悲惨さを訴えている。二度と起きないようブレーキをかける意味でも、映画でしっかり描いていくべきだと思う。原爆詩の朗読もまた機会があったら聞いていただきたい。

 -上映会は地元のツバキを活用して地域活性化を目指す「五島の椿(つばき)プロジェクト」の特別企画。広報活動で協力する「椿サポーター」を務めている。
 (ツバキの)自然のものから素晴らしい化粧品が生まれていて、化学的なものではなく植物の中の大切な成分を人がもらって元気になる。これからも応援し続けたい。大きな広がりになるようアピールしていきたい。

 -長崎県民に向けて。
 17歳の時、石原裕次郎さんと映画「若い人」のロケで長崎に来て、朗読もさせてもらうなど、つながりが多い。世界から一番早く入ってきた文化を大事にしている地域なので、これからもそうあってほしい。

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