「ドライバーの残業時間は年1300時間以上も…」迫る“2024年問題” 荷台だけ輸送で運転時間が半分に?!

物流業界に“2024年問題”と呼ばれるトラックドライバー不足の危機が迫っています。

この問題を解決する1つの手段として注目されているのが愛媛県四国中央市で運用が進む「RO-RO(ローロー)船」という船です。果たして物流業界の“救世主”となれるのでしょうか?

愛媛県四国中央市の大王海運が運航している「RO-RO船」。

千葉の港を出発し、岡山の宇野港に立ち寄りました。RO-RO船に乗って運ばれてきたのは「トレーラーシャーシ」と呼ばれるトラックの荷台部分だけ。船にトラックのドライバーは乗っていません。

<大王海運・曽我部雅司 社長>
「車のタイヤが転がって船に乗る、これを『ROLE ON(ロールオン)』と言います。今度はタイヤが転がって船から降りてくる、これが『ROLE OFF(ロールオフ)』と言います。この2つを合わせて『RO-RO(ローロー)船』と呼んでいます」

港に着くと、荷台は牽引車につながれて船から降ろされ、そのまま配達先へと運ばれます。そして、宇野港で新たな荷台が運び込まれたRO-RO船はおよそ2時間半かけて愛媛の三島川之江港へ向かいます。

大王海運ではRO-RO船を3隻所有し、千葉・大阪・岡山・愛媛の4つの港を週6往復、運航しています。船は全長約180メートル、幅27メートルあまり。トラックの荷台を最大160個輸送することができます。

<RO-RO船の船長>
「何が一番良いと言ったら『スピード』ですね。船のスピードが従来の2倍で、大量の荷物を素早く、安全に運送できるのでこれからどんどん増えていくんじゃないでしょうか」

荷物の3割が届かなくなる!? 迫りくる“2024年問題”とは

物流業界で今、注目されている「RO-RO船」。

導入の背景にある物流の“2024年問題”とは何なのでしょうか?

<大王海運・曽我部雅司 社長>
「現状、トラックドライバーの残業時間は年間で1200~1300時間。それ以上と言われることもあります」

長年、物流業界ではトラックドライバーの長時間労働が指摘されていました。近年では、通販サイトの普及や宅配便の扱い件数の増加により、さらなる長時間労働の常態化が懸念されてます。

そこで国は、来年4月に施行される働き方改革関連法で、年間の時間外労働を960時間に制限することになりました。

<大王海運・曽我部雅司 社長>
「これはざっくり言うと、ドライバーの労働力が約2割削減されるに等しいということになります。つまり“2024年問題”というのは物流の危機に直結する課題だろうというふうに考えています」

民間の調査会社が今年1月に発表した試算によると、このままだと2030年には「日本全体で約35%の荷物が運べなくなる」おそれがあるということです。

特に地方部ではその影響が大きく、四国では約4割の物流が停滞する可能性もあります。

運転時間が半分に! 現場のドライバーの反応は…

来年4月以降のドライバー不足に備え、活用が広がるRO-RO船。例えば、愛媛県松山市から宮城県までドライバーがトラックを運転し、すべて陸路で荷物を運ぶと約15時間かかります。

一方、途中の三島川之江港から千葉港までをRO-RO船での輸送に切り替えることで、ドライバーの運転時間は船に乗る前後合わせて約7時間半と半分に減らすことができました。

<トラックドライバー>
「貨物を集荷したあと、港でシャーシー(=トラックの荷台部分)を切り離したら、そのままRO-RO船に預けられるので、長距離輸送の場合と違って定時で退社できるようになりました。身体的にはかなり楽になりますね」

荷物を預ける企業にとっても、RO-RO船はコストを増やさず大量輸送ができるため、メリットが大きいと言います。

四国中央市から全国に紙製品を出荷する、製紙業大手の大王製紙は…

<大王製紙 流通企画部・蛭田博之 課長>
「大量輸送ができるのがまずポイントです。また、2024年問題のドライバー不足にも対応できます。コストも従来とほぼ同じ価格でCO2も削減できて、荷主にとってはメリットが大きいと思います」

さらにRO-RO船は、大規模災害で道路が寸断された場合の輸送手段としても期待されています。

大王海運では、四国4県からのRO-RO船の需要拡大に対応するため、去年6月、市内に新しい大型物流倉庫を設置しました。

<大王海運・曽我部雅司 社長>
「現状、船の輸送能力は限られていますが、今後さらにSDGsの進展や環境問題に対する意識が強まってくると、さらなる輸送方法の見直しが求められてくると思います」

とうとう来年4月に迫った“2024年問題”。物流業界では持続可能な新しい輸送のかたちを模索する動きが進んでいます。

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