小6死亡 学校で…教訓のさいたま市、全中学校の正門にAED設置へ 酒造会社が2千万円分のAED寄贈を申し出る

屋内に設置されているAEDの収納ボックス=25日、さいたま市役所

 埼玉県さいたま市教育委員会は25日、市立中学校全58校の正門など屋外に、自動体外式除細動器(AED)を本年度中に設置すると発表した。市内の酒造会社が寄贈する。市立学校の子どもらの問題提起を受け、検討されていた。屋外にAEDを設置することで、24時間救命措置が可能となり、市教委は「救いうる命を救うことができる」としている。

 2011年9月、市立日進小学校6年の桐田明日香さん=当時(11)=が駅伝の練習中に死亡した事故を教訓に、市教委はAEDを使用した救命マニュアル「ASUKAモデル」を策定した。教職員の研修を充実させ、小学5年から中学1年にかけて、AEDの使用を含む心肺蘇生法を学ぶ授業を実施している。

 市教委はマニュアル策定から10年を迎えた昨年9月、フォーラムを開催。参加した子どもたちから、地域に設置されたAEDや24時間使用できるAEDが少ないとの指摘を受けた。市立学校168校には少なくともAED1台が設置されている。市教委が学校の設置場所の工夫や増設の検討を進めていたところ、寄贈の申し入れがあったという。

 寄贈するのは、同市西区の「小山本家酒造」「世界鷹小山家グループ」(小山景市代表取締役会長)。創業215周年を記念して、AEDと屋外型AED収納ボックスそれぞれ58台を寄贈する。約2千万円相当という。

 市内全域の中学校の正門に設置することで、探すことなく、24時間救急活動が可能になる。収納ボックスは施錠せず、リモート監視や位置情報システムが導入される。

 竹居秀子教育長は25日の定例会見で、寄贈に感謝した上で、「ASUKAモデルの誕生の地であるさいたま市の中学校に、24時間使えるAEDを設置できる」と意義を強調。「人材育成のソフト面に、ハード面がそろった。誰もが人命救助をすることができ、安心安全なまちづくりが実現できる」と述べた。小学校などへの拡大は、効果と課題を検証するとしている。

 明日香さんの命日となる今月30日、進学する予定だった日進中学校で、贈呈式が開催される。小山会長や清水勇人市長らのほか、明日香さんの家族も出席する。

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