長崎・対馬市長 核ごみ調査反対 27日の定例市議会で表明へ

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を巡り、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長が調査を受け入れない方針を固めたことが26日、複数の関係者への取材で分かった。27日の定例市議会最終本会議で表明し、議会後の記者会見で決断に至った理由などを説明する見通し。任期満了に伴う来春の市長選に対する態度も表明するとみられる。
 文献調査を巡っては、賛否などの立場から市内11団体が6月、計8件の請願を市議会に提出。市議会は9月12日の定例会本会議で、調査受け入れ促進を求める建設4団体の請願を賛成多数で採択した。議長を除く18人のうち、賛成10人、反対8人で僅差だった。
 複数の関係者によると、比田勝氏が文献調査を受け入れない判断をした背景には、市民の「分断」や1次産業への風評被害などの懸念があるとみられる。市議会の採決結果が僅差だったことも判断材料の一つになったもようだ。
 文献調査は市町村が応募するか、国からの申し入れを受諾すれば始まる仕組み。受け入れ是非の最終決定権を持つ比田勝氏は9月12日の本会議の休憩中に「今議会中に私としての意見は述べたい」と明言し、判断が注目されていた。
 比田勝氏は2020年の市長選に立候補した際、最終処分場を誘致しない旨を演説。これまでの市議会や定例会見の場でも、調査に慎重な姿勢を示していた。
 市長選(来年2月25日告示、3月3日投開票)については9月14日の市議会一般質問で「市の将来を見据え、出馬を前向きに検討している」と言及。報道陣の取材に「(文献調査の是非の判断と立候補の表明が)同じ日になる可能性も否定しない」と説明していた。市長選では、核のごみ問題を巡り、論戦が繰り広げられる可能性がある。
 文献調査は3段階ある処分場選定の第1段階で2年程度。受け入れた自治体などには最大20億円が国から交付される。20年11月に北海道寿都町と神恵内村で始まって以来、受け入れた自治体はない。


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