塩谷の町有林でスギ花粉防止にヘリから薬剤散布 東農大、全国で例ない大規模実証実験 効果的な濃度など検証

 花粉症の原因となるスギ花粉の飛散を防ぐ薬剤をヘリコプターで散布して効果などを調べる実証実験が26日、塩谷町の町有林で行われた。林野庁の花粉症対策の補助事業で、東京農業大の小塩海平(こしおかいへい)教授(植物生理学)が実施。小塩教授によると、有人ヘリによる大規模な実証実験は全国でも例がないといい、効果的な薬剤濃度や散布方法を検証する。

 実験は町有林約6ヘクタールで行う。小塩教授が民間企業と開発したスギ花粉飛散防止剤と同成分の食品添加物混合剤を、濃度や、霧状、水滴状などの散布の仕方を変えてまき、効果などを調べる。同町や空中散布事業を手がけるヘリサービス(芳賀町)が協力した。

 同日はヘリが上空を旋回しながら、濃度の異なる薬剤を8区画に分けた町有林に散布した。1カ月後、ドローンで花粉源の雄花の様子を確認する。散布は県外からの農薬、航空散布の専門家らも視察した。塩谷町の担当者は「町にはスギが多く花粉症は深刻な問題。対策につながってほしい」と期待した。

 小塩教授らが開発したスギ花粉飛散防止剤は既に農薬登録され、スギの雄花を枯らし翌春の花粉を減らす効果、周辺の植物や人に影響を及ぼさないことが確認されている。一方で、いかに低コストで効果的に散布するかが実用化に向けた課題になっている。

 同町は他の樹種が混じらないスギの純林が広く確保でき、松くい虫防除で使う機材を応用できる条件などから実証実験のフィールドに選ばれた。

 林野庁は花粉症対策として花粉の少ない品種への植え替えを進めているが、全国のスギ人工林は2017年時点で、国土面積の1割を超える約444万ヘクタールに上る。今年は1964年に日光市内のスギ花粉症が国内で初めて報告されて60年目で、小塩教授は「栃木県で実験を行えることに意義を感じる。ヘリによる大規模散布の技術を確立し、花粉症で苦しむ人を減らしたい」と話している。

スギ花粉飛散防止剤を散布するヘリコプター=26日午前、塩谷町上寺島

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