渡辺大知が大友良英を分析「見えないものと演奏を楽しんでる」

神戸出身の俳優・ミュージシャンの渡辺大知が、村上春樹の人気小説を舞台化した『ねじまき鳥クロニクル』に、主役・岡田トオル役で出演。9月26日に大阪市内でおこなわれた取材会で、本作の注目ポイントのひとつ・音楽について、ミュージシャン目線で言及するシーンがあった。

音楽家・大友良英とは何かとゆかりの深い間柄の渡辺(9月26日・大阪市内)

今では朝ドラや大河ドラマにも出演する人気俳優となった渡辺だが、実はロックバンド「黒猫チェルシー」のボーカルとして活動をスタート。ロックを基調にさまざまな要素を取り込んだ音楽で注目を集めたが、2018年に活動休止している。

今回出演する『ねじまき鳥クロニクル』は、コンテンポラリー・ダンスや生演奏を交えたパフォーマンス色の強い舞台。音楽を担当したのは、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)をはじめ数々の舞台や映像作品の音楽を手掛けてきた大友良英だ。

そしてなんと、ドラマ『季節のない街』(ディズニープラス)など渡辺が出演した作品のうち7本ほどは大友が音楽を担当しており、なにかとゆかりの深い間柄。

渡辺は、「一緒にライブをしたこともあるし、毎回(現場で)会うと『またお前か』と言われます」と苦笑しつつ、音楽については「常にカオスとやさしさが同居しているというか、言葉にはならないけど理解しようともがいているみたいな音だなあと・・・。今回も、そんな気がしています」と魅力を語る。

さらに、ギタリストでもある大友について、「(ギターは)弾いているうちにチューニングが狂っちゃう、不安定さみたいなものを大事にされているんですね。その不確定さのなかに、確固たる思いみたいなものが、大友さんの音楽からは感じられるのが好きです」と、ミュージシャンらしい分析を。

大友の音楽について「言葉にならないが理解しようともがいているような音」と評する渡辺(9月26日・大阪市内)

今回の舞台では、大友が役者の動きを見ながら、即興も交えて生演奏をするのが見どころのひとつ。「(舞台)袖から観ながらやるので、端の人に合わせるのがすごく大変だと。『見えないよ、全然!』って、楽しそうに文句を言ってました(笑)。その『見えないもの』に合わせるのを、実は楽しんでいるのではないのかな」と推測した。

『ねじまき鳥クロニクル』は、行方不明となった飼い猫と妻を探すトオルが、次第にねじまき鳥にまつわる謎に巻き込まれていく物語。トオル役は、渡辺と成河が2人1役で演じ、ほかには門脇麦、大貫勇輔・首藤康之(Wキャスト)などが出演。11月の東京公演を経て、大阪公演は12月1日~3日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)にて。チケットは1万2000円で、9月30日から発売開始。

取材・文・写真/吉永美和子

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