長崎・対馬 核ごみ調査受け入れず 市長、議会採択覆す 「市民の合意不十分」

核のごみ最終処分場選定に向けた文献調査を「受け入れない」と表明する比田勝対馬市長=同市議会議場

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた第1段階の文献調査について、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日の市議会最終本会議で、調査を受け入れず、国側に応募しない考えを正式表明した。主な判断理由を「市民の合意形成が不十分」などと説明。市議会は調査受け入れを促進する請願を採択したが、市長は反対の立場を示し、最終処分場を誘致しない姿勢を明確にした。
 比田勝市長は同日午後、市役所で記者会見して詳細な判断理由を説明した。「観光業、水産業などへの風評被害が少なからず発生すると考えられる」と述べたほか、「将来的な、想定外の要因による危険性が排除できない」と処分場の安全性にも懸念を示した。
 文献調査を巡っては、市内計11団体が6月、賛否などの立場から計8件の請願を市議会に提出。このうち建設4団体は人口減少や経済衰退への危機感を背景に調査受け入れ促進を求め、市商工会は議論検討を市議会に要望した。一部漁協や反対する市民団体、水産団体は風評被害や処分場への安全性を懸念し、反対を訴えていた。
 市議会は今月12日の定例会初日の本会議で、建設4団体と市商工会の請願計2件を賛成多数で採択。文献調査の是非にとどまらず、最終処分場誘致までを視野に入れて採決した結果、賛成10人、反対8人だった。
 大石賢吾知事は「今回の判断はさまざまな意見を踏まえて熟慮を重ねて行われたものと認識しており、県としても対馬市の判断を尊重したい」とのコメントを発表した。
 比田勝氏は2016年の市長選で初当選。2選した20年の市長選では、最終処分場は誘致しない旨を演説した。これまでの市議会や定例記者会見でも調査に慎重な姿勢を示していた。
 最終処分場選定に向けた調査は3段階で、文献調査は2年程度。市町村が応募するか、国の申し入れを市町村が受諾すれば始まる。受け入れた市町村などには、最大20億円を国が交付。20年11月に北海道寿都町と神恵内村で始まって以来、受け入れた市町村はない。

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