対馬核ごみ調査 市長表明受け 長崎県民の声 地域疲弊など島民の心情理解

 長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、「核のごみ」最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れないと表明した。県民からは、安全性への懸念や風評被害を念頭に「賢明」と評価する声が聞かれたものの、処分場の必要性や疲弊する地域を憂う心情に理解を示す意見も少なくなく、重い課題は積み残されたままだ。
 数年前まで漁師だった壱岐市の篠崎繁さん(72)は、核のごみを地下に埋める地層処分の安全性に疑問を抱き「(壱岐の隣の)対馬近海で漁をすることも増えており、対馬市長の判断に安堵(あんど)した」と胸をなで下ろした。長崎市の大学生、渕山蓮さん(21)も「風評被害が考えられるので、対馬市長は賢明な判断をしたと思う。だが核のごみの問題は早期解決が必要。国は国民の理解を得るよう努めてほしい」と求めた。
 九州有数の観光地である雲仙市の土産店主の男性(60)は、文献調査に伴う国からの最大20億円の交付金を念頭に「対馬市の財政状況が厳しい中、市長は難しい判断だったと思う」とおもんぱかった。一方で「雲仙市の財政状況を考えると人ごとではない。仮に処分場を誘致するとなれば観光への風評被害が心配だが、どこかが引き受けなければならない問題だ」と悩ましそう。
 大村市の公務員男性(46)は「市長はこれまでの慎重姿勢を貫いたのだろう。だが交付金で島を活気づけようという(調査)賛成派の気持ちも分かるし、(反対派と)どちらが正しいということではない」と冷静に受け止めた。
 佐世保市の会社員女性(36)も「調査への賛否が分かれたが、いずれも対馬の未来を考えてのことだった」と話し、「市民の分断につながり将来に禍根を残さないか」と心配そう。その上で最大20億円の交付金について「国が自治体を金で釣っているように見える」と苦言。「国はただ『安全、大丈夫』と強調しているだけのような感じがする。メリットだけでなくデメリットも含めて説明すべきだ」と訴えた。

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