「やってみないと分からないのかな」10月スタート「インボイス制度」って何?不安募らせる事業者 一方で思わぬ好景気も

2023年10月から「インボイス」という新たな制度が始まります。そもそも、インボイスとは、事業者の間で取引をした際に発行される消費税の税率や税額などを記載した請求書のことです。

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仕入れにかかった税率が8%なのか、10%なのかや、税額を厳格化し、正確に税金を徴収するための仕組みとなっています。実はこの制度、導入による変化は、すでに身近なところでも起きていますが、混乱や反発を生んでいます。

<エムタクシー 松本博取締役>
「領収書になります」

<井手春希キャスター>
「今回、何が変わったのですか?」

<エムタクシー 松本博取締役>
「一番変わったのは、登録番号が書いてありますが、これはインボイスのうちの会社番号なんです。これがいままでなかった」

<井手春希キャスター>
「この表示はなかったのですか?」

<エムタクシー 松本博取締役>
「なかったです。インボイスを使う方はこの番号ないとできない」

静岡市駿河区に本社を置くタクシー会社「エムタクシー」は、「インボイス制度」への対応を始めています。領収書をよく見ると、頭文字がTで数字が13桁並ぶインボイスの「登録番号」が記されています。

これ以外だと、わたしたちが普段、生活する際にあまり気にすることのないインボイス制度。それだけに理解は進んでいない状況で、10月からスタートすることに会社側は不安を募らせています。

<エムタクシー 松本博取締役>
「お客様は、お金を払う側なので、特にインボイスは必要ないのかもしれないけれど、お互い登録番号がないとまずいことも出てくる。個人のお客さんだけでなく、会社のお客様もいるので、やってみないと分からないのかなという気はする」

事業者が気をもむインボイス制度。この番号がないと取引を止められるとの懸念も浮上していて、導入には反対の声も多いのが現状です。

反対の声を受け、鈴木財務大臣は、丁寧な説明を続ける姿勢を強調します。

<鈴木俊一財務大臣>
「事業者の立場に立って、寄り添って進めていくことが大切なんじゃないかと思います」

その一方で、インボイスの導入によって思わぬ好景気が生まれています。静岡市葵区にあるはんこの専門店では、政府が推し進めた「脱ハンコ」で低迷していたハンコ業界は大忙しに。

インボイスの登録番号を印字したゴム印の注文が急増していて、こちらの店では、過去2番目に忙しい状況だと話します。

<はんこ屋さん21 静岡流通通り店 久田峰生代表>
「(静岡市の)平成の大合併があった。清水区、駿河区、葵区全部、住所印を作り替えた。その時が一番忙しかった」
Q.近年でいうと2番目に忙しい?
「そうですね、ここまでになるとは思わなかった」

さまざまな業種に影響を与える「インボイス制度」。10月から対応に迫られる事業者がどのくらいいるのか不透明な状況です。

<井手春希キャスター>
このインボイス制度ですが、導入に対して反対の声が数多く上がっているのが現状です。

この制度によって、最も深刻な影響を受けそうなのが、これまで消費税の納税が免除されてきた売上1,000万円以下の事業者です。インボイスを発行するためには、消費税を納める課税事業者になる必要があります。

もし、課税事業者にならなかった場合、事実上、小規模事業者の代わりに取引先が消費税を肩代わりすることになります。取引先から見ると自分たちの負担が増えるため、小規模事業者との取引をやめることにつながるリスクがあります。

導入のメリットがいまひとつ、分かりづらいインボイス制度。10月からスタートしますが、理解が進まずに、混乱することも懸念されています。

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