「毎日楽しかった」と感謝 富山・清水町「八百屋西ノ宮」、57年間愛され30日閉店

感謝の思いを伝える美代子さん

 富山市清水町の「八百屋西ノ宮」が30日で、57年の歴史に幕を下ろす。地場野菜や果物を中心に取りそろえ、常連客の生活を支えた。店を切り盛りする西ノ宮美代子さん(73)は「お客さんあっての店だった」と感謝を伝えた。

 スーパーマーケットより、地場のものがそろう八百屋が好きだった店主の西ノ宮誠三郎さん(79)は、1966年に実家の横に一人で店を構えた。その後、美代子さんと結婚。誠三郎さんが市場で仕入れ、美代子さんが商品の陳列や接客を担った。

 誠三郎さんが午前6時半ごろに仕入れから戻ると、早くから来るお客さんのためにすぐに店を開けるのが日課。「時間がないから」と、店の外に並ぶ商品以外のほとんどは値段を示すポップ(札)が付いていない。お客さんに聞かれて答えるスタイルだった。

 中華料理店やイタリアンなど多くの飲食店にも好まれた。10年以上通ったという、インド料理店「インディラ」のマネジャー、中島幸代さん(50)は「変わった食材をお願いしても快く準備してくれて助かった」と話す。2年前から店を手伝う、近くの谷内和子さん(77)は「奥さんの温かい人柄がみんな好きで常連が多かった」と笑う。

 3年ほど前から誠三郎さんが病気で入退院を繰り返すようになり、「そばにいてほしい」と言われたことで美代子さんは閉店を決めたという。美代子さんは「お客さんの喜ぶ顔を見たくて頑張ってきた」とこれまでを振り返り、「多くの人に支えてもらって毎日が楽しかった。本当にありがたい」と目に涙をためながら感謝の言葉を繰り返した。

 30日の営業は午前7時半から午後4時まで。

歴史が感じられる看板を掲げる八百屋西ノ宮

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