迫る2024年問題 青森県内物流 輸送減の影響必至/進まぬ運賃引き上げ 業者売り上げ減、運転手離職も

大型トラックにパレット(荷役台)を積み込む運送業者。2024年問題では長距離輸送の運行回数減少が懸念される=9月27日、板柳町の青森流通センター

 来年4月に始まるトラック運転手や建設業従業員、医師などを対象とした時間外労働(残業)の規制強化まで、10月1日で半年となった。中でも注目されているのは、運転手の労働時間短縮で輸送能力の縮小が懸念される物流の「2024年問題」。青森県の運送業者は「長距離輸送の回数減少は避けられない」と影響を直視する。運行回数が減るのに運賃を値上げできなければ業者の売り上げが減るのは必至。収入減を受けてドライバーが離職する可能性もあり、物流維持へ課題は山積みだ。

 「運賃の引き上げも運送業務の効率化も思い通りに進んでいない。燃料費高騰も大きな負担で、15%から20%ぐらいの運賃引き上げが必要」。ツーワン輸送(八戸市)の葛西亜貴夫代表(県トラック協会三八支部青年部会長)は、厳しい表情で現状を口にする。

 運転手の労働時間を規制内に収めるには、集荷先で荷物の受け取りを待つ「荷待ち時間」や荷役作業の短縮が必要。輸送回数を減らしても業者の売り上げや運転手の給料水準を維持するには、運賃を引き上げなければならない-というのが運送業者側の主張だ。

 いずれの対応も荷主側の協力が不可欠だが、県内の運送業者によると、交渉に苦労するケースが少なくない。1990年の規制緩和で運送業界への新規参入が増えて過当競争となり、仕事を得るために低運賃や無償での荷役作業を受け入れてきたことが背景にある。

 国は運送業者と荷主との価格交渉を促すため「標準的な運賃」を示しているが、県内の複数の運送業者は「代わりはいくらでもいる-と考える荷主はいまだにいるし、人件費を過度に削減して安い運賃で受注する業者もいる」と明かす。

 青森流通センター(板柳町)の川口晃司代表(県トラック協会弘前支部青年部会長)は「標準的な運賃が浸透してから、労働時間の規制に着手するべき。時間だけ減らすから、いろいろと問題が出てきている」と苦言を呈する。2024年問題をきっかけに運送業者の経営が悪化し、廃業が進むのではとみる。

 輸送力が不足して物流が滞れば、消費者側への影響も多大だ。

 物流シンクタンク「NX総合研究所」(東京)の大島弘明常務は「標準的な運賃をベースに自社の原価計算結果を参考にしながら、引き上げ額を具体的に示すことが必要。運送業者の経営と物流を維持するためにも、運賃交渉をためらっている時期ではない」と指摘する。

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2024年問題 24年4月からトラック運転手など自動車運転従事者、建設業従業員、医師の時間外労働(残業)の上限規制が強化されることで生じる問題。19年施行の働き方改革関連法で上限規制が設けられたが、長時間労働が常態化している3業種は5年間、規制の適用が猶予されていた。残業時間の上限は自動車運転業と医師が年960時間(医師は一部1860時間)、建設業が年720時間となる。いずれの業種も人手不足が深刻なため、既存の業務量をカバーできる人員を確保できなければ、多大な影響が生じることが懸念されている。

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