青森県産米、猛暑の影響どこまで 品質低下、収量減 生産者から懸念の声

新米の出荷のためトラックで農協倉庫を訪れた豊川社長。品質に気をもみながら、連日コメの収穫や出荷などの作業に追われている=9月末、青森市

 青森県内で2023年産米の刈り取りが終盤を迎える中、記録的猛暑の影響などとみられる品質低下や収量の減少を懸念する声が上がっている。等級検査がまだ序盤のため現時点で全容は見通せないものの、県外では、米粒の形や色などが一定の基準を満たし高値で取引される1等米の比率が大幅に低下するなど、被害が深刻で減収が不安視される地域も出てきた。品質を保つため、県内生産者は急ピッチで稲刈りを進めている。

 「今夏の暑さは異常。例年ならほぼ1等なのに、今年は2等米がいつもより多いという人がちらほらいる」。9月末、青森市の農業法人・豊川農産の豊川民男社長(74)が出荷作業の手を止め、硬い表情で語った。

 約60ヘクタールの水田を手がける同法人は、高温による生育の早まりを受け、例年より10日ほど早い同月上旬に稲刈りを開始。豊川社長は「今のところ(2等米以下になる)落等はないが、刈り取りはまだ半分残っている。品質がどうなるか分からず、安心できない」と気をもむ。

 全農県本部や県農産園芸課、生産者らの話を総合すると、地域や個人によってばらつきがあるものの、コメが白く濁る「白未熟粒」や米粒にひびが入る「胴割れ」など、高温が影響するとされる品質低下が例年より多く見られるという。

 県内のある農協の担当者は「不良粒は機械ではじかれるので、出荷されるコメは高温障害による落等はほぼない」と話す一方、別の農協の担当者は「(白未熟粒の一種で中心部が白く濁る)乳白などで落等が多いのは事実。他県のように、1等米がない-とまでは言わないが、品質は芳しくない」と声を曇らせる。

 十和田アグリ(十和田市)の竹ケ原直大社長(44)は「この辺りのような寒冷なヤマセ地帯で、乳白がこれほど出るのは今年が初めて。機械ではじかれるコメが例年になく多く、手持ちの量が減るのは間違いない」と話す。

 周辺農家の乾燥調製も担う黒石市の佐山孝文さん(68)は、収量への影響を指摘。「今秋前半に作業を引き受けた中では、去年より収量が良かった人はいない。光沢がないコメも多かった」と話した。

 県農産園芸課によると、コメの等級はあくまで取引のための目安で、格下げは食味に直結しない。同課の大和山真一課長は「等級が下がっても食味に問題はない。消費者には吟味されたコメが届いているので、高温に耐えてコメを育てた農家を支えるためにもぜひ県産米を食べて応援してほしい」と強調。生産者に向けては、刈り遅れによる品質低下を最小限に抑えるため早期の刈り取り終了を継続して呼びかけている。

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