長引くその咳、風邪じゃないかも! ネット情報には警鐘 宇都宮で市民講座

講演する池田助教=17日、ライトキューブ宇都宮

 第25回日本咳嗽(がいそう)学会学術大会(大会長・吉原重美(よしはらしげみ)獨協医大小児科学主任教授)が9月16、17の両日、宇都宮市宮みらいのライトキューブ宇都宮で開かれた。市民公開講座「その咳(せき)、風邪じゃないかも!原因と治療」では同大呼吸器・アレルギー内科学の助教らが講演。長引くせきの診断や治療のポイントについて、理解を深めた。

 大会は前身となる「咳嗽研究会」として1999年に始まり、全国持ち回りで行われている。北関東開催と、小児科医が大会長を務めるのはともに初めて。

 吉原大会長によると、2カ月以上続くせきで苦しむ患者は全国で200万人いると推定される。大会テーマには「咳嗽診療を巡るクロストーク」を掲げ、多角的な視点から病態解明を目指す姿勢を確認した。

 公開講座では同大呼吸器・アレルギー内科学の池田直哉(いけだなおや)助教が「成人のせき」、同大小児科学の加藤正也(かとうまさや)講師が「小児のせき」を解説した。

 池田助教は咳嗽の原因となる場所は喉だけでなく、肺や気管支など多岐にわたると指摘。風邪以外にも感染症、慢性炎症、アレルギーなど要因も幅広いと続けた。

 日本呼吸器学会では、せきを持続期間によって分類。3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽と呼ぶ。

 池田助教は慢性咳嗽について「せきぜんそくや逆流性食道炎、副鼻腔(ふくびくう)気管支症候群などが疑われる」とし、「特徴的な症状や病歴が隠れているかもしれない。普段から経過などを記録してほしい」と呼びかけた。

 加藤講師は小児の長引くせきの具体例として、気管支ぜんそくや気道異物などを挙げた。乳幼児は気管がもともと細く、炎症によりさらに細くなる。喘鳴(ぜんめい)が出やすく、急性細気管支炎などのウイルス性呼吸器感染症とぜんそくの鑑別が難しいという。

 誤嚥(ごえん)が原因の気道異物では、生後10カ月の女児が断定まで2カ月かかった事例を紹介。「ラッカセイなどを食べていた時に、突然咳嗽が出現した」などのエピソードを医師に伝えないと発見が困難になる。このほか、アトピー咳嗽、胃食道逆流症や心因性咳嗽の症状や特徴などを紹介した。

 市販のせき止めの服用やYouTubeなどに投稿されているせき対策の動画にも言及。「米国の小児科学会は幼児(4歳未満)にせき止めなどを安易に処方すべきではないと推奨している。インターネットの情報は医学的に効果が証明されていないものも多い」と警鐘を鳴らした。「注意すべきなのは遷延性咳嗽や慢性咳嗽。せきが長引く際は、自己判断せず、小児科へ足を運んでほしい」とまとめた。

講演する加藤講師=17日、ライトキューブ宇都宮
長引くせきについて理解を深めた市民公開講座=17日、ライトキューブ宇都宮

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