在ルーマニア特命全権大使が強調する、ウクライナ難民への“日本らしい支援”とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。9月27日(水)放送の「New global」のコーナーでは、キャスターの堀潤がルーマニアから“ウクライナ難民支援”と“日本の現状”についてお届けしました。

◆在ルーマニア大使が語る"日本らしい”支援

ウクライナ難民の現状をレポートすべく、ルーマニアで取材中のキャスターの堀潤。この日は、在ルーマニア大使館の植田浩特命全権大使に、日本が果たすべき役割などについて伺い、さらにはルーマニアの難民支援現場の最前線にいる担当者に話を聞きました。

まずは植田大使にルーマニアと日本の現在の関係を聞いてみると、ある問題点を指摘。それは"ODA(政府開発援助)”で、「ルーマニアは2007年にEUに加盟し、それまでは途上国の範疇に入っていたのでODAが使えたんですが、それ以降は途上国の卒業国ということで、ODAが使えなくなったんです」と経緯を話します。

日本政府としてルーマニアに支援をすることはできなくなりましたが、何らかの形でルーマニアが行っている活動に支援ができないかと熟考した結果、「国際機関の方々を通じて、国際機関の方々と日本政府が協力して支援しているという側面が非常に強くあります」と現状を解説します。

そして、ウクライナに対する支援については、時期や各国それぞれの事情を鑑みつつ、「日本らしい支援をする必要があると思います」と植田特命全権大使。

その"日本らしさ”とは何かといえば"復興の経験”。「日本は戦後の混乱のなかから奇跡的な復興を遂げ、阪神淡路大震災、東日本大震災という大きな災害に打ち勝ち、その後の復旧・復興を進めてきた大きな経験があります。この経験を活かして支援していくことが非常に重要だと思います」と主張。

一方で日本周辺の安全保障環境が刻々と変化していくなか、日本も既存のODAだけでなく、新たにOSA(政府安全保障能力強化支援)を立ち上げ、多方面から世界の安定を図ろうと試みています。

東欧地域においても日本のそうした活動に期待する声はあるのか聞いてみると「国際的な防衛環境は大きく変わっていますし、昔の発想では対応できないものができてきているなかで、OSAのような新しい保障協力ができ、今(日本で)議論になっている防衛装備品、憲法の制限についても(ルーマニア政府や各国の大使などから)よく聞かれたりします。みなさん(日本に)関心はおありだと思います」と日本の注目度の高さに触れた上で、「今、まさに議論が始まったところなので、じっくりと議論をして、必要な方向に進んでいくことが必要だと思います」と植田特命全権大使は話していました。

◆ルーマニアの人々が難民問題に熱心に取り組む理由

続いて堀は難民支援現場の担当者、ルーマニア・ブカレスト市のコスミナ・シミアン局長にもインタビュー。植田特命全権大使も話していた通り、日本は戦争や災害からの復興を幾度となく経験しているため「復興へのサポートは得意なところだと思うが」と堀が切り出すと「日本は前世紀、多くのことを経験してきたのだから、それを人々に示す道徳的義務があると思います」とシミアン局長。

さらには「家屋が壊されたり、自分の人生の進路が一夜にして変わってしまうことがどういうことか、日本人は世界の他の多くの人々よりも理解できると思います」とも。

現在、ルーマニアではウクライナ難民に対して、多くの方々が協力的に活動しています。これまで多くの難民キャンプを取材してきた堀は「(難民支援に)地元の政府や自治体の協力は欠かせないが、ルーマニアはとても協力的で、その姿勢はすごく尊敬する。なぜ、そこまで熱意を持って取り組んでいるのか」と感銘を受けたことを伝えると、シミアン局長は「第二次世界大戦中、私の家族は難民となり、祖母は枕2つと毛布1枚、そして4人の子どもを連れて避難することを余儀なくされました。私たちには不愉快な歴史があります」とルーマニア人の原体験を吐露。

そして、「祖母がよく話してくれた4人の子どもと枕2つと毛布1枚で冬をどうやって暮らしたかという話は今でも心に残っていますし、私たちの組織で働いている同僚やルーマニアの人々の多くが同じような経験をした祖父母がいると思います。ルーマニア人が仕事の傍ら難民を助けようとしているのは、こうした個々人の経験を共有しているからだと思います」と難民への思いを明かしていました。

「The HEADLINE」編集長の石田健さんは、植田特命全権大使の発言に「アジア、そしてヨーロッパ全体の安全保障が変化しているからこそ、我々が関与しなくてはいけない、まさにその通りだと思った」と共感します。

一方、シミアン局長のインタビューに対しては「難民などの問題が歴史的、あるいは現代的にも身近だからこそ熱意を持って取り組んでいるという話が印象的だった」と感嘆しつつ、「日本も本来であれば難民を受け入れられる体制を整えなくてはいけないのに、そうしたものから距離が遠く感じてしまう。支援に関しても復興や復旧といったところに目が向いてしまうところは今後の課題であると同時に、我々も改めてそこに思いを馳せる必要がある」と日本の改善点を指摘します。

エッセイストの小島慶子さんは、「日本は戦後、非常に中立的な立場で平和の構築などに貢献できたと思うし、その日本ブランドは1度失ってしまうと2度と取り戻せない」と日本の実績、そしてその重要性を示し、その上で「さまざまな安全保障上の環境の変化はあるが、日本は平和を志向する国であり、戦いが起きたときにどうするかではなく、どうしたら起きないようにするかに知恵と力を尽くす国。この信頼は絶対に守ってほしい」と切望。「その信頼があるからこそ、難民支援など今後できる可能性はあるので、そこは大切にしてほしい」と望んでいました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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