【マレーシア】ゲオ、中古衣料の小売を強化[繊維] 来年3月までに17店舗に拡大

セカンドストリートは、クアラルンプールとスランゴール州を中心に15店舗を展開している(ゲオホールディングス提供)

ゲオホールディングス(名古屋市)は、マレーシアの首都圏で古着の小売店「セカンドストリート」の展開を強化する。2024年3月までに17店舗体制とする予定だ。業容拡大に伴う人材確保を課題としながらも、24年3月期(23年4月~24年3月)は、前年比40%増の売上高を目指す。【笹沼帆奈望】

セカンドストリートは、18年にマレーシアに進出した。現在は、首都クアラルンプールとスランゴール州を中心に15店舗を展開している。マレーシアのセカンドストリート運営を担う現地法人セカンドストリート・トレーディング・マレーシアの井村建介マネジングディレクターは、今後も両地域を中心にドミナント展開(特定地域での集中的な出店)を行う予定だとした上で、「どれくらい距離が離れた商圏で出店できるのかを見極めていく」と説明した。

首都圏での出店に注力しているのは、配達と人事を効率化するためだ。日本から輸出した古着はクラン港(スランゴール州)に入るが、そこから各店に配送する際には立地が密集している方が効率を高められる。また、店舗を他州に拡大すると人員を新たに募集しないといけなくなるため、ドミナント展開で事業拡大を図っている。

現在の仕入れ量は、年間でコンテナ約100FEU(40フィートコンテナ換算)分となっている。古着を取り扱う地元の衣料品店向けに卸売りも行っており、「セカンドストリート」での販売分と合わせると仕入れ量の9割が売れている。商品は約1カ月半の頻度で入れ替わるといい、売れ筋の夏物衣料やデニムのほか、軽めの羽織りもの(アウター)なども取り扱っている。商品の価格は5リンギ(約158円)からとなっている。

衣服のほか、靴やかばんなども取り扱う=9月5日、クアラルンプール(NNA撮影)

顧客層はマレーシア人がメインとなっており、民族別ではマレー系と華人系が半々となっている。交通量や人の往来が多く、賃料が比較的に安いところを選んで出店。出店情報を交流サイト(SNS)で配信すると反響は大きく、井村氏は、「出店時に約100人が並んだこともある」と話す。

進出した18年度(17年4月~18年3月)の売り上げ目標は、卸売事業と小売事業合わせて9,000万円相当を掲げていた。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で営業できない時期もあったが、着実に事業を拡大し、本年度は売上高で前年比40%増を目指す。

■課題は人材の定着率

課題は人材確保だ。出店を加速するためには、多数を採用・雇用しながら、定着率を高める必要がある。

人材紹介会社ネオキャリア(東京都新宿区)の現地法人リーラコーエンマレーシアが今年5月に実施した企業動向調査では、日系企業を中心とするマレーシアの企業の34.3%が「人材流出(定着)/確保難」を事業運営で最も優先的に対策が必要なリスクだと考えていた。

マレーシアのセカンドストリートでは、定着率を上げるために社員を1カ所に集めて各種規定や管理業務を学ぶ研修を行っているほか、入社した従業員を歓迎する昼食会を本社で実施。井村氏は、「給与などの雇用条件も重要だが、マレーシアでは従業員同士の横のつながりが重視されることからコミュニケーションを大切にしている」と話す。現在の従業員数は約200人となっている。

日本の財務省の貿易統計によると、日本から輸出された中古衣類は22年に22万4,647トンを記録した。そのうちマレーシアは10万5,144トンで約5割を占める最大の仕向け先で、ゲオホールディングスのほか、ブックオフコーポレーションも中古品店「ジャラン・ジャラン・ジャパン(JJJ)」 を展開している。

井村氏は「マレーシアには顕在的にも潜在的にも古着衣料の利用者が多い」と話す(ゲオホールディングス提供)

セカンドストリートの井村氏は、マレーシアの市場について、顕在的にも潜在的にも古着衣料の利用者が多いと指摘。今後のリユース市場の一層の広がりに期待を示した。

ゲオホールディングスは、マレーシアのほか、米国と台湾にも出店。海外では8月末時点で計65店舗を運営している。

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